2017年上半期 建設業界で人材不足が深刻化

2017年09月05日 07:36

画・2017年上半期 建設業界て_人材不足か_深刻化

2011年から続く建設業界の人材不足。特に若者の建設業界離れは深刻だ。建設業で人材不足が続けばオリンピック・パラリンピックや災害対応にも悪影響を及ぼしかねないため、人材の確保が急務だ。

 2011年ころまでの雇用状況は、長引く不景気から企業側が有利な環境だった。「氷河期」とも呼ばれた雇用環境は企業側には安い給与や過酷な労働条件下でも求人には一定の応募が見込めることでメリットがあったものの、労働者側の人権を軽視しているともとれるブラック企業が珍しくない状況であった。

 しかし、景気の上向きと震災からの復興需要により、12年以後は失業率も改善し、雇用は圧倒的な売り手市場となる。氷河期時代とは違い、企業側が労働者を確保しなければならない時代となったのだ。17年に発表された大卒就職率は97.6%と、20年の間で最高値を記録。

 労働者確保合戦となっている雇用市場の中で、福祉・介護、流通、ITの業界と共に人材を確保できていない分野が建設業界だ。建設業界は、11年の東日本大震災の復興や20年の東京オリンピック・パラリンピックへの需要に対し、人材を確保できていないのが現実だ。

 建設業界の人材不足が深刻な点は、一過性のものではなく将来的にも続く問題であるということだ。大きな理由の一つに、今後も一定の需要のある産業でありながら、若者が入ってこないという点があるだろう。総務省が発表した『労働力調査』によると、1995年~15年の間の建設業就業者の推移は、50代以上の就業者は600万人~650万人と一定なのだが、20~30代の就業者は700万人弱から500万人と大幅に減少していて、20年程度で3分の2程度になっているのだ。そのため、建設業界では「仕事はあるけれど労働者がいないため受注できない」という「人材不足倒産」が目立つ。

 建設業には3K(きつい・汚い・危険)というイメージが根強くあり、現実の現場でも過酷な業務が存在していることも確かだ。各業界が人材確保に躍起になっている中、既に、若者が建設業に入ってこない、または入ってきても続かないことに対し「これだから若者は情けない」と一蹴することができる状況ではない。建設業界に一定の人材が居なければ、オリンピック・パラリンピックにも、地震や津波などの災害にも対応ができない状況となってしまう。

 給与の底上げや現場の安全管理、労働環境の整備を急速に行わなければ、建設業界の人材不足倒産を減少させることは不可能だろう。(編集担当:久保田雄城)