トヨタ、トルクサーボモジュール搭載のヒューマノイドロボットT-HR3を発表

2017年11月25日 07:08

Toyota_Humanoid_Robot

マスター操縦システムに登場する操縦者はT-HR3にかかる外からの力を感じながら、操縦者と同じ動きをT-HR3にさせる。キモはトルクサーボモジュールにある

 トヨタ自動車は、第3世代のヒューマノイドロボット「T-HR3」を公開した。トルク(力)を制御するトルクサーボモジュールと、全身を自在に操るマスター操縦システムなどにより、操縦者はT-HR3にかかる外からの力を感じながら、操縦者と同じ動きをT-HR3にさせることができる。

 トヨタが過去に発表した第1、第2世代の楽器を演奏するヒューマノイドロボットは、指の動きなどプログラミングに基づく位置制御の正確さを追求してきたシステムだった。

 今回のT-HR3は、家庭や医療機関など、さまざまな場面で人に寄り添い、生活を安全にサポートするパートナーロボットを目指して開発した。いわば、やさしく、しなやかな動きが可能なロボットである。

 将来は、家庭や医療機関だけでなく、災害地、建設作業、宇宙などで活躍するロボットへ、その応用を視野に入れたヒューマノイドロボットだ。

 T-HR3のコア技術はトルクサーボモジュールだ。トルクセンサー、モーターや減速機などで構成されており、トヨタが多摩川精機株式会社および日本電産コパル電子株式会社と共同で開発を進めてきた技術である。

 トルクサーボモジュールは、内蔵された高感度トルクセンサーによりトルクを感知し、意図したトルクを出力できるよう、モーターを制御することで、ロボットの関節を柔軟に制御することでしなやかな動きを実現する。加えて、ロボットが外から受ける力を操縦者に伝えることができる。このトルクサーボモジュールは、T-HR3の関節29カ所とマスター操縦システムの16カ所に配置されている。

 また、このトルクサーボモジュールとマスターアーム、マスターフット、ヘッドマウントディスプレイから構成されるマスター操縦システムで、ロボットの全身を直感的に操ることが可能となった。

 操縦者は、ロボットに搭載されたステレオカメラに映し出される立体映像を、ヘッドマウントディスプレイを通じてリアルタイムで確認しながら、マスターアームやマスターフットを通じて、あたかも操縦者の分身であるかのような感覚で、離れた場所からT-HR3を操縦することができるわけだ。

 さらに、トルクサーボモジュールにより、周囲の人や物などに接触してもバランスを維持する全身協調バランス制御を実現。さらに、機器同士や操縦者との接触を回避し、操縦者が安全に操作できる自己干渉回避機能も搭載した。

 パートナーロボット部長の玉置章文氏によると、「トヨタはクルマだけでなく、さまざまなモビリティにより、『すべての人に移動の自由を』提供することを目指しており、T-HR3もこの考え方に沿って開発した。パートナーロボット部は、『かしこさ』だけでなく、安心感を与えてくれるような『やさしさ』を兼ね備えたロボットを開発することに全力で取り組んでいる。T-HR3の最先端技術は、今後のパートナーロボットの発展に貢献する画期的な開発であると考えている」と説明した。

 トヨタは、1980年代から産業用ロボットの開発に取り組み、自動車の生産・開発技術を応用し、屋内や屋外を問わず、人の活動をサポートし、人と共生するパートナーロボットの開発を進めてきた。

 今後も、高齢者や障害者、そして医療・介護などに従事する関係者を支援し、人と寄り添うロボット開発に取り組んでいくとしている。(編集担当:吉田恒)