59円預金残高差し押さえ 国保税滞納で

2018年02月02日 08:00

 国民健康保険税の滞納措置に、行政が、貯金残高59円を差し押さえた例や月額6万9000円の家賃を支払いながらの3人家族の唯一の収入源(派遣労働での月給17万円)を差し押さえるなどの徴収事例のあることが1日の参院予算委員会で指摘され、適正な対応が求められた。安倍晋三総理は「各市町村に対し、制度が適切に運用されるよう周知を図っていきたい」と述べた。

 月給の差し押さえには法令で平成3年に限度額が定められた。差し押さえしてはならない給与限度額は納税者の最低生活を維持させるためのもので、所得税、住民税、保険料に相当する金額のほか、納税者本人に月10万円、生計を一にする親族については1人4万5000円をみるようになっており、これらについては差し押さえが禁止されている。

 この男性(都内在住・70歳、妻は病気、息子は引きこもりで働けない)世帯の場合、19万円が認められるはずなのに、これを下回る給料の差し押さえが行われていたことになる。日本共産党の倉林明子議員が事例をあげ、過度な徴収に是正を求めた。

 安倍晋三総理は「国民健康保険は他の公的医療保険に加入しない方が加入する国民皆保険の砦として重要な制度。制度を持続可能で安定的なものとして次世代に受け継いでいく必要がある。国保制度発足時に比べ、被保険者の高齢化や医療の高度化などの変化により給付費が大幅に増加してきたことや無職の方が占める割合が高まるなど、被保険者の中で所得の低い方が増えているなど、様々な課題が生じてきていると認識している。こうした状況を踏まえ、今年4月から国保制度を都道府県単位にすると同時に財政支援の拡充なども行うことにしている」とした。

 そのうえで安倍総理は「各市町村に対し、制度が適切に運用されるよう周知を図っていきたい」と述べた。

 倉林議員は「病気や入院を契機に国保税の滞納に陥るケースは少なくない。滞納して差し押さえされ、生活困窮に陥るという連鎖は断ち切らなければならない」と訴えた。

 一方で支払い能力があるのに、支払わない納税者おり、公正を図る必要はある。2015年に新たに発生した国保税滞納額は約2500億円。同年度の延べ差し押さえ件数は約29万8000件、金額で968億円になっていた。(編集担当:森高龍二)