半導体市場、国内の情勢は

2012年02月06日 11:00

 過去最高の売上高を更新した世界の半導体市場。スマートフォンやEV車などの普及、インド・中国を中心とするアジア市場の拡大などに支えられて、2012年も前年を上回る売上高を記録することが予測されている。しかし一方で、日本の半導体企業はどうであろうか。

 相次いで発表されている半導体企業の第3四半期決算を見てみると、国内最大手である東芝の全体の売上高は、結会計期間業績(昨年12/31までの3ヶ月間)で前年同月比91%、第3四半期連結累計期間業績(昨年12/31までの9ヶ月間)で前年同月比93%と減収。第3四半期連平成24年3月期の連結業績予想でも前年同月比で97%と予想されている。ルネサス エレクトロニクスも半導体売上高は、前4半期比9%減の1980億円。平成24年3月期通期の連結業績予想値も下方修正し、前期実績約1兆1378億円の売上高であったのに対し、8850億円との予想を発表している。また、その去就が取り沙汰されているエルピーダメモリも、売上高前年同期比48%減の2196億円、923億円の赤字となっている。それ以外にも、Siウエハー製造大手のSUMCOが太陽電池用Siウエハー事業から撤退する計画であるなど、各社が苦境に喘いでいる様相だ。

 昨年は震災やタイの洪水など、自然災害による被災が大きな影響を及ぼしたことが要因ではあるが、それだけでなく、急激な円高や市場環境の悪化なども原因と考えられている。特に、米国の経済低迷や欧州の経済危機に端を発する世界規模景気の低迷は、今まで爆発的市場拡大を続けていた中国市場の市況悪化・需要減にまで及び、日本企業の苦境の一因となっている。さらに、EETimesJapanによると、米国の市場調査会社であるInternational Business Strategies(IBS)の創設者であり、CEO(最高経営責任者)でもあるHandel Jones氏が、「2012年の世界半導体市場は、成長率6から7%で伸びる。しかし2013年には、米国経済の低迷による影響を受けて縮小していく」との予測を明らかにしている。

 Jones氏の予測通りとなれば、世界規模での半導体市場縮小を、前もって日本企業が体感している格好である。世界的には成長を続ける2012年の内に2013年以降のための基盤を強固にすることができるか、それが日本企業の課題となるであろう。

 技術大国と言われた日本である。今年に入ってからも、エルピーダメモリが不揮発性でありながらデータの読み書きが高速で消費電力も少ない新メモリを開発したり、信越ポリマーがAgナノワイヤーインクを使い、ITOタッチパネルの弱点と言われる、曲面形状対応や大型パネル(15インチ)に最適な透明導電フィルムを開発するなど、世界市場にアピール出来る技術の製品化が進んでいる。世界に対抗できる技術が宝の持ち腐れにならぬよう、そして、他国の企業にその技術が流れぬよう、日本の各企業には先の課題に取り組んでいってもらいたい。