南北首脳会談の成果と平和希求の外交努力の重み

2018年04月29日 10:55

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憲法記念日を5月3日に控え、私たち日本国民は憲法9条の重み、平和を希求する外交努力の重みを今一度再確認することが大切だ。

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が南北軍事境界線を越えた瞬間、板門店(ハンムンジョム)は「分断の象徴」から「平和の象徴」になった。

 韓国・文在寅(ムン・ジェイン)大統領は金委員長が史上初めて南北軍事境界線を越えた瞬間をこう意義付けた。そして両首脳は手をつなぎ南北境界線を越え、一旦、北朝鮮側に入り、再び手をつないだまま韓国側に入る「歴史的シーン」を世界にみせた。

 首脳会談で南北首脳は会談の定例化に合意。文大統領は今秋、平壌(ピョンヤン)を訪問することが決まった。

 終始笑顔で迎えた南北首脳会談。会談前の芳名録への署名では金委員長も「新しい歴史は今から。平和の時代。歴史の出発点から」と書き込んだ。朝鮮半島の平和と安定はアジア諸国全体の安全保障環境に大きくプラスとなる。今回の南北首脳会談の成功が米朝首脳会談でさらに実効性をあげることが期待される。

 今回の南北首脳会談では、両国首脳が「南と北は朝鮮半島での尖鋭的な軍事的緊張状態を緩和し、戦争の危険を実質的に解消するために共同で努力していく」などを記した「朝鮮半島の平和と繁栄、統一に向けた板門店宣言」に署名した。

 宣言は「南と北は休戦協定締結から65年となる今年に終戦を宣言し、休戦協定を平和協定に転換し、恒久的で堅固な平和体制の構築に向けた南北米の3者または南北米中の4者会談開催を積極的に推進していく」としたことは注目される。

 また「5月1日から軍事境界線一帯で拡声器放送とビラ散布をはじめ全ての敵対行為を中止し、その手段を撤廃して、今後、非武装地帯を実質的な平和地帯としていく」とした。

 さらに核のない朝鮮半島実現へ「南と北は完全な非核化を通じ、核のない朝鮮半島を実現するとの共通目標を確認した」とし「南と北は朝鮮半島非核化に向けた国際社会の支持と協力へ積極的に努力する」としている。

 今回の宣言が実をあげていくことを心から願う。実をあげることは、日本においては「平和憲法遵守」の後押しにもなるからだ。

 安倍政権の下で防衛装備増強の口実に北朝鮮を利用しているのではと感じる事が度々ある。「日本を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中」というフレーズが何百回も繰り返されてきた。北朝鮮がミサイル発射のたび、日本上空とはいえミサイルが宇宙空間の高さにある場合も「Jアラート(全国瞬時警報システム)」が活用され、与党内からも、そこまで広範囲に発信する必要があるのかと疑問の声があがった程だ。選挙をにらみ、危機感をあおる発信だったのではとの見方も出た。

 今回も自民党は次期防衛大綱見直し提言に「多用途防衛型空母」の保有を盛り込み、政府は射程500kmを超える長距離巡航ミサイルの導入を決める理由づけに北朝鮮動向を最大理由にしている。世論を味方につけるには安全保障への危機感をあおることが最も近道だからだ。

 専守防衛の日本に、こうした装備が本当に必要なのか。憲法の下で保有が許される範囲の装備といえるのか。客観的事実の積み重ねから冷静に判断していくことが強く求められる。

 小野寺五典防衛大臣は27日の記者会見で、500kmを超える長距離巡航ミサイルの導入の正当性について「スタンド・オフ・ミサイルについて申し上げれば、一層厳しさを増す安全保障環境を踏まえ、諸外国の航空能力の進展が著しい中、わが国の防衛に当たる自衛隊員が相手の脅威の圏外から対処できるようにすることで、自衛隊員の安全を確保しつつ、わが国を有効に防衛するために導入するもの」と説明し「専守防衛の下、国民の生命・財産、わが国の領土、領海、領空を守り抜くため、自衛隊の装備の質的向上を図るものと考えている」と強調した。

 しかし、努力すべきは、そうした事態を招かないための外交努力ではないのか。過去の自民党政権は戦争の反省の上に、憲法9条の下で外交努力により平和を維持してきた。憲法記念日を5月3日に控え、私たち日本国民は憲法9条の重み、平和を希求する外交努力の重みを今一度再確認することが大切だ。そして、そこで平和の維持のためにできる知恵を出し合うことこそ必要だ。(編集担当:森高龍二)