トヨタ、米国で燃料電池大型商用トラックの改良型を公開、実証実験を拡充

2018年08月02日 06:40

Toyota FC_Truck

トヨタが米国で公開した燃料電池大型商用トラック。キャビンに簡易ベッドを備えたスリーパーキャブを採用、ホイールベースを延長することなく先代より広い車内空間を確保した

 トヨタ自動車の北米事業体「Toyota Motor North America, Inc.」(TMNA)は、米国の独立研究機関であるCenter for Automotive Research主催のイベントにおいて、航続距離延長や居住性向上を図った改良型の燃料電池(FC)大型商用トラックを公開した。

 TMNAは、昨年夏からカリフォルニア州で行なってきた実証実験に、今秋から公開した改良型を追加導入する。

 今回の実証実験は、トヨタの物流施設から排出されるCO2をゼロにすることを目標とした取り組み“トヨタ環境チャレンジ2050”の一環で、1台目の実験車は実際に港湾エリアの貨物輸送に従事し、これまでに約1万6000kmを走行した。

 今回の改良型は、これまでの実証実験から得られた検証結果を生かして開発を進めてきたモデルだ。具体的には、居住性と操縦性を向上させる取り組みとして、運転席のスペースに簡易ベッドを備えたスリーパーキャブを採用したほか、FCユニットの配置を工夫し、ホイールベースを延長することなく先代より広い車内空間を確保した。

 また、水素タンクの本数を4本から6本に増やし、通常運航における満充填時の推定航続距離を約320kmから約480kmに伸ばした。

 実証実験プロジェクトのチーフ・エンジニアであるアンドリュー・ランド(Andrew Lund)氏によると、「テストコースやロサンゼルス市の公道でFC大型商用トラックの性能を評価することにより、トラックの組立工程や車両性能の改善点をリストアップしてきました。改良型の開発においては、実験車としての性能を向上させるだけでなく、実用化も視野に入れる必要があったのです」と語った。

 現在、ロングビーチ港やロサンゼルス港では大きな環境負荷を与える1万6000台以上の貨物輸送トラックが走行しており、その数は2030年までに約3万2000台に増加すると推定されている。貨物輸送トラックが大量の大気汚染物質を排出しながら港湾エリアを通行しており、周辺コミュニティにとって深刻な問題となっている。そのような課題の解決を目指すために、トヨタは水素利用の拡大に取り組んできた。カリフォルニア州においては、FC大型商用トラックの実証実験に加え、バイオマスから水素・電気・水を生み出す発電施設「Tri-Gen(トライジェン)」の建設を予定している。

 TMNA によれば、FC技術の大型商用車への可能性を検証するという実証実験の目標は一応の成果をみたとして、今後はFC大型商用トラックの一般的な輸送についての実用可能性について検証を始める。(編集担当:吉田恒)