教養主義未だ健在。「生涯学習している」6割。「教養を深めるため」4割

2018年09月09日 11:51

 教養主義の没落などという者もいる。明治末期より始まる岩波文化に代表される教養主義は、確かに戦後日本の進学率の上昇とともに希薄化していったように見える。しかし、それはエリート学生の中の人格的な態度の変容であって、日本国民一般としては未だ教養に対する関心は希薄化していないようだ。

 7月、内閣府が「生涯学習に関する世論調査」を実施し、その集計結果を8月末に公表している。この調査は全国の18歳以上の日本国籍を有する者3000人を対象にして行われた。

 「この1年間くらいの間に、どのような場所や形態で学習をしたことがあるか」という質問に対して、何らかの形で「学習したことがある」と回答した者は全体の58.4%と6割近くとなった。

 学習の形態を複数回答で答えてもらった結果では、「インターネット」を利用したものが22.6%と最も多く、次いで「職場の教育・研修」が21.5%、「自宅での学習活動(書籍など)」が17.8%、「テレビやラジオ」が14.5%、「図書館、博物館、美術館」13.8%、「公民館・生涯学習センター等」10.4%、「民間の講座や教室等」9.1%、「同好者の自主的なサークル等」8.0%、「大学・高校等の講座や教室」6.7、「その他」0.6%となっている。

 「学習をしたことがある」と答えた者にその理由を複数回答で答えてもらったところ、「教養を深めるため」が37.1%で最も多く、次いで「人生を豊かにするため」が36.2%で、両者を合わせると73.3%の者が実利を離れて一般教養のために学習していると言える。その他、「家庭や日常生活のため」が32.1%、「健康維持・増進のため」29.9%の順となっている。

 「学習した成果は生かされているか」という質問に対しては、「自分の人生を豊かにしている」が50.5%で最も多くなっており、次いで「仕事・就職で生かしている」47.9%と続く。

 「今後学習したい内容」では、「趣味的なもの(音楽、美術等)」が39.3%で最も多く、次いで「健康・スポーツ(健康法・医学等)」34.0%の順だ。社会人に対して「大学等の学校で再度学習したいか」という質問に対しては36.3%が「学習してみたい」と答えている。「大学などでの学習に期待する成果」に関しては、「幅広い教養を得ること」が48.2%で最も多く、次いで「資格を取得すること」が40.2%と続く。

 調査結果からは人生を豊かにするものとしての教養の取得に積極的な日本国民の意識がうかがえる。(編集担当:久保田雄城)