労働力人口の減少に伴って深刻化する人材不足を反映して、高齢者雇用を推進する企業が増加してきている。厚生労働省が発表した2018年の「高年齢者の雇用状況」によれば、70歳まで働ける制度を設けている企業の割合は過去最高になり、約4分の1が何らかの制度を独自に作っていることがわかった。
高齢者を雇用する試み自体はすでに数年前から始まっている。人事向け総合情報サイト「人事のミカタ」が実施したアンケート調査では、5年前に施行された改正高年齢者雇用安定法によって、7割以上の企業が高年齢者雇用確保措置を実施した。そのうちのほとんどが定年後の継続雇用制度の導入だ。60歳で定年という従来の形は維持しつつ、継続的に勤務することを希望する高齢者に対しては65歳までの雇用を保障する企業がほとんどなのだ。一方で定年自体を引き上げる企業や定年の撤廃に踏み切る企業は少数派となっている。
高齢者を雇用することに企業が積極的になっていることは歓迎すべきだが、労働力人口が減少している現状を考えると、より高齢者が職場にとどまりやすい環境づくりを行うことも必要だろう。大企業になればなるほど、高年齢の従業員に対して期待する役割や成果への期待は変わる傾向が強くなる。確かに高年齢者になれば体力の衰えは否めず、若い従業員と同じ成果を期待することはできないだろう。しかし長年勤務してきたからこそ蓄積されているノウハウや知識・技術の伝承、人脈の活用、若手の育成など、高年齢者に期待できる分野は広い。定年後も働きたいという従業員を再雇用する企業を支援するために用意されている、高年齢者雇用暗転助成金や65歳超雇用推進助成金などの助成金も活用しながら、待遇の改善に励むことも企業に期待されている。
少子高齢化社会がいよいよ進む中、働ける高齢者が気持ちよく働き続けられる社会を作るのも企業の役割の一つになりつつある。65歳を上限にするのではなく、希望者は70歳まで働けるような制度を作る企業を増やすのが国家の課題となるだろう。(編集担当:久保田雄城)