外国人労働者の受け入れ拡大のための改正出入国管理法が8日未明、自民、公明、維新の会などの賛成多数で成立した。懸念される部分は政省令にゆだねられ、安倍晋三総理は来年4月の法施行までに「法の全容を示す」としている。国民の懸念が解決される制度になっているのか、内容を注視するほかない。
この改正法採決のための参院本会議前に立憲民主党、国民民主党、日本共産党、社会民主党、沖縄の風の野党5会派から参議院に「安倍晋三総理に対する問責決議案」が提出された。自民、公明は当然反対にまわり、否決した。国民投票ならどのような数字になったか。安倍内閣に対する総括を来年夏までできないことは残念だ。
安倍総理は所信表明で「国民への丁寧な説明」を語ったが、改正出入国管理法も最初から「来年4月施行ありき」のおしりを切った審議で、委員長の職権が乱発された。
安倍総理を支える自民、公明は数の力で、国民の懸念や失踪外国人技能実習生への聴取票から浮き彫りになった受け入れ企業の「日本の恥」といえる法を守らない最低賃金以下での労働、週100時間を超える長時間労働、セクハラ、パワハラなどが起こっている問題に対する防止策などを示させることなく「来年4月の法施行までに全体像を示す」と内容を先送りする総理答弁を許し、法案を成立させた。新たな在留資格制度の創設を求めていたのは日本経済団体連合会だ。
民間企業への水道事業の売却を可能にした改正水道法も十分な審議時間をとらないまま、数の力で通した。思えば高度プロフェッショナル制度の創設も経団連の要望だった。カジノ法案(IR実施法案)は米国側、特にトランプ大統領の支援者と言われカジノ王といわれた人物とトランプ大統領からの要望。参議院議員定数6増の改正公選法は自民の都合だった。いずれも丁寧な審議は記憶にない。カジノ法案の時、今回の改正出入国管理法同様に国会前で反対の声を届けようとの市民らが抗議の集会を展開した。
安倍政権下で、国会は本当に政府の下請け機関に成り下がった。最も憂慮するのはこの問題だ。
総理への問責決議案は否決されたが、提出理由には「安倍内閣発足以来、延々と繰り返されている立法府軽視の許し難い政治行動と傲慢な政治姿勢によって、わが国の議会制民主主義が根底から破壊されている事態を、これ以上見過ごすことができないからだ」とある。安倍政権懸念の最大要因がこれだ。
公文書改ざん、隠蔽、廃棄、口裏合わせを許してきた行政府の長が長としての責任を口にしながら、責任をとってきたといえるのか。今回成立させた外国人労働者受け入れ拡大の改正出入国管理法、受け入れ側に『労働法規を遵守』させ、『日本人と同等以上の賃金』を保障し、『生活環境を整備』することを、法施行までに政省令できちんと制度設計することを切に求めたい。
新制度の特定技能1号は1年毎の更新、しかも3か月の短期契約、派遣契約を排除していない。外国人労働者を雇用調整の使い捨てにするようなことは1件たりともあってはならない。それでこそ「世界に誇れる国」といえるだろう。(編集担当:森高龍二)