アウディ電動SUV「Audi e-tron」、スキーダウンヒルコースの急斜面で登坂実験に成功

2019年03月04日 06:27

Mattias Ekstroem

リヤアクスルに2基、フロントアクスルに1基の電気モーターを備えた特別な電動quattroシステムが搭載されたAudi e-tron技術デモ車両が、ダウンヒルコースを駆け上る

 アウディは、世界屈指のアルペンスキーヤーが競う有名なスキーのダウンヒルコースで、アウディ初の電動SUV「Audi e-tron」プロトタイプを走らせるというとんでもないトライアルを実施した。

 1月下旬に特別装備が施されたAudi e-tronは、オーストリアの伝説的な難コース、シュトライフの“マウスファーレ”を見事に登ったと、アウディのテクノロジーコミュニケーションズが写真と共に発表した。“マウスファーレ”は、世界のダウンヒルコースのなかでも最も急な斜面で、その勾配は85%にも達する。

 アウディは昨年来、“Audi e-tronエクストリーム”と名付けられた数多くのイベントを開催して、この電動SUV性能の高さをアピールしてきた。米国コロラド州のパイクスピーク、ナミビアの塩田などで、Audi e-tronプロトタイプは、過酷なチャレンジを制覇してきた。今回の“マウスファーレ”登坂により、アウディは電気自動車の限界を打ち破り、電動quattroテクノロジーの技術的可能性を示したと鼻息が荒い。

 思い返せば、1986年クワトロがデビューして間もない頃、アウディ100CSクワトロがスキージャンプ台を登っていくテレビCMで世間を驚かせた。

 壁のように立ちはだかる85%の“マウスファーレ”の斜面を登るために、Audi e-tronの技術デモ車両には、リヤアクスルに2基、フロントアクスルに1基の電気モーターを備えた特別なquattroパワートレーンが搭載された。それにより、総ブースト出力は最高370kW、ホイールトルクは8920Nmを達成し、急勾配を登るために必要な最大のパフォーマンスを確保した。また、ソフトウェアを修正し、駆動トルクとトルク配分を見直していた。さらに、このイベント用に特別に開発されたスパイク付きの19インチホイールが用意された。

 加えて、最大限の安全性を確保するために、技術デモ車両には、ロールケージと6点式シートベルトを備えたレーシングシートが装備され、車両には落下の危険を避けるためのビレーが装着され、そこに安全ケーブルが通されました。が、車両を引き上げる装置は用意しなかったという。

 ステアリングを握ったのは、世界ラリークロス選手権のチャンピオンで、ドイツツーリングカー選手権(DTM)のタイトルも2度獲得したマティアス・エクストロームだ。彼は、「これほど難しい地形に対応できるこのクルマの能力には感銘を受けました」と述べ、このイベントが生涯で最も驚くべき体験だったと語っている。アウディ公式HPでは、ビデオクリップも視聴できる。(編集担当:吉田恒)