フォーミュラE、第4戦メキシコ。勝敗の分かれ目はエネルギー効率“電費”にあり

2019年02月23日 12:04

Formula E, Mexico City E-Prix 2019

「フォーミュラE 2018-19」シーズン第4戦メキシコ、ドライビングスキルに加えて、PCUの小型化・高性能化、ドライバーのパワーコントロール能力も重要であることを示唆している。写真のカーナンバー「11」は、優勝したルーカス・ディ・グラッシ選手

 FIAフォーミュラE2018-2019「シーズン5」第4戦が、メキシコ首都メキシコシティ郊外のディルイーヤで2月16日に行なわれた。フォーミュラEは、FIA(国際自動車連盟)が主催する電気自動車の世界最高峰のレースだ。

アウトドローモ・エルマノス・ロドリゲス・サーキットで行われた今シーズン第4戦決勝の勝者は、Team Audi Sport ABT Schaeffler(チーム・アウディ・スポーツ アプト シェフラー)だった。公道コースに詰めかけた大観衆が見守るなか、アウディのルーカス・ディ・グラッシ選手が最終ラップの最後のストレート、チェッカー目前でトップに躍り出る劇的な勝利を収めた。ディ・グラッシ選手にとって今回の勝利はフォーミュラE通算9勝目となる。チーム・アウディはメキシコでのレースに強く、2017年、2018年にも勝利している。

 今回のメキシコ戦で、勝敗の分かれ目となったのが、マシンのエネルギー効率の優劣とエネルギーマネージメントだった。最終ラップで優勝争いをしていた多くのマシンはエネルギーをセーブして走行する必要があったが、チーム・アウディのディ・グラッシ選手は引き続きアタックをしかけてオーバーテイクする余裕が残っていた。

 一方、予選で好調だった日産勢は、オリバー・ローランド選手とセバスチャン・ブエミ選手の2台が終盤まで表彰台を争うも、ファイナルラップにバッテリー切れで2台ともにストップ。リタイアに終わった。エネルギーマネージメントの完全な失敗だったと言えそうだ。

 今シーズンからマシンの駆動電源であるバッテリーの規定容量が見直され小型化・大容量化が図られた。電力量は28kWhから54kWhの約2倍に増えたことで、昨シーズンまでのようにドライバーがレース途中でマシンを乗り換える必要がなくなり、モーターの最大出力も250kWにアップ、最高速は280km/hに上昇した。そのため、マシンのエネルギー効率の高さが一層重要となっている。

 こうした電力をコントロールするうえで鍵を握るのが、バッテリーから駆動用モーターに供給する電力を直流から交流に変換し制御するインバーターの性能向上と小型化だ。

 今回エドアルド・モルタラ選手が3位表彰台を獲得したチーム・ヴェンチュリーは、日本の半導体・電子部品メーカーであるロームとオフィシャル・テクノロジー・パートナーシップ契約を締結し、ローム製のフルSiCパワーモジュールをマシンに搭載することで、駆動モーターをコントロールするインバーターの高性能化を図っている。シーズン4時点で、SiCパワーモジュール搭載以前のインバーターと比べ、43%の小型化と6kgの軽量化を実現しているという。前シーズンまでは苦戦していたが、今シーズンは第3戦でもエドアルド・モルタラ選手が4位に入るなど、健闘している。インバーターの好事例といえるだろう。

 今回、メキシコでの第4戦は、電動車のレースとして象徴的な結果を示したともいえる。それは、予選で1位パスカル・ウォーレン選手、2位ルーカス・ディ・グラッシ選手、3位フェリベ・マッサ選手と、元F1ドライバーが独占した。つまり、ラップタイムを競う予選ではドライビングスキルがモノを言うが、決勝ではインバーターなどのPCUの小型化・高性能化、そしてドライバーのパワーコントロールスキルも重要なポイントとなる。従来の燃費ならぬ“電費”が鍵ということだ。

 フォーミュラE、次の第5戦は、3月10日に香港で開催される。(編集担当:吉田恒)