IoT(モノと接続されたインターネット)はAIやビッグデータと並んで社会を変える新しいテクノロジーを表す流行語とも言える。既にいくらかのIoT機器が出回ってきているが、これらへの投資は当初予想されていたほどにはスムーズではないようだ。
IoTは様々なモノをオンライン化することであるが、これまでオンライン化されてこなかったディバイスはセキュリティ上多くの弱みを抱えている。新たに明らかとなるセキュリティ上の課題はIoT投資の不確実性を増大させる。この不確実性をリスクとしてコスト計算すると、これまで見積もられてきたIoTのROI(資本収益率)は過大な見積もりではなかったかという疑念も出てきている。
現況における企業のIoT投資の認識はどのようなものであろうか。米国に本部を置くIT業界団体のCompTIAが米国を拠点とする企業506社を対象にIoTの動向について昨年10月、11月に調査し、7日に日本支局がその結果をレポートとして公表している。
IoT導入の効果を財務面から評価した認識では、35%がIoTを主に「コスト削減の手段」と認識し、31%は生産量の増加、データの収益化、製品のサービス化など「新たな収益を生み出すもの」と認識しており、この2つに認識が分かれた。他の企業の多くはこの2つの要素を組み合わせたものと認識しているようだ。
IoT投資のための資金調達にはROIによる評価が不可欠だが、約6割の企業がIoTのROIの計算は困難であると回答し、先行投資が大きなハードルだと回答した企業は43%、さらに34%は継続的なコストが問題としている。セキュリティの対応に関しては6割の企業がIoTの展開においてサイバーセキュリティを優先すべきであるとしている一方で、24%がセキュリティよりもイノベーション活動を優先するとしている。
CompTIAのシニアディレクター、セス・ロビンソン氏は「社内のITチームや社外のテクノロジーパートナーにとっては、先導してROI議論を行う大きなチャンスとなる」、「テクノロジーが組織にとってより戦略的役割を果たすことから、ビジネス全体の収益を見ながら、成長マインドセットという観点から投資をより評価する必要がある」と指摘している。
IoTに限らず新たなテクノロジーの運用のためには新たな専門知識の獲得、スキルを持った人材の確保が不可欠だ。この調査では十分な高度専門知識を持っていると回答した企業はいなかった。IoTは大きな可能性を秘めているというものの未だその未来は不透明なようだ。(編集担当:久保田雄城)