今や、世界規模で普及が加速しているLED照明市場。蛍光灯、HID、白熱電球の代替として、家庭内のみならず、商業施設や産業、工業分野でもその採用が進んでいる。
Grand View Research, Inc.の調査では、2025年までに年平均成長率14.4%で成長し、1089億9000万ドルの市場規模に達すると予測。日本政府も「エネルギー基本計画」の中で、2020年までに新たに出荷(フロー)する照明器具のすべてをLEDに、また2030年までには国内に設置されている照明器具(ストック)をすべて、LEDを用いた照明(SSL)にする目標を掲げているが、フロー100%については前倒しで達成する勢いだ。
LED照明最大のメリットは、白熱電球の約40倍、蛍光灯の約4倍、ハロゲンランプの約13倍といわれる長寿命と、白熱電球やハロゲンランプに比べて約6分の1、蛍光灯と比べても約2分の1もの超低消費電力にある。さらに二酸化炭素の排出量も白熱灯などに比べて大幅に削減できる点や、紫外線や赤外線の放出量が少ないので、屋外での使用や、文化財など貴重な展示物の照明設備にも適している。
LED化が進むのは照明市場だけではない。家電をはじめとする民生機器はもちろん、自動車や産業機器など、あらゆる電子機器で搭載されている。これら電子機器の表示用としては、赤色や黄色、緑色などカラーLEDが多かったが、近年注目されているのが小型の白色LEDだ。産業機器や民生機器におけるパネルの数字表示やインジケータ光源として、デザイン性と視認性の高い白色LEDは欠かせないものとなっている。
しかし、デザイン性や視認性、省エネ性能以上に重要なのが「信頼性」だ。とくに産業用途においては、10 年以上通電しても光度劣化を起こさないレベルの高い信頼性が求められる。ところが、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂をパッケージ部分に使用した従来の白色のチップLED では、光度低下や実装強度に課題があり、リフロー時に実装不良を起こすなどの問題が指摘されていた。
そんな中、日本の電子部品大手のロームが、エポキシ樹脂とシリコーン樹脂の良特性を兼ね備える樹脂を新たに採用した、業界最高クラスの信頼性を実現する1608 サイズの白色チップLEDの開発に成功した。同社ではこれまで、1608 サイズのチップLED として、赤色から緑色までラインアップを保有していたが、市場要求に応えて白色の開発を進めていた。この製品の登場により、白色LEDの抱えていた課題が大幅に改善される見通しだ。
民生家電や産業機器はもちろん、自動車の電子部品などでもLEDの需要は拡大している。また、急速に普及しているIoT関連機器、スマートホーム、スマートグリッドなどでもLEDは不可欠だ。また、それらの普及に伴ってLEDの性能面への欲求もさらに高度になってくる。LEDに関しては、とかく価格が話題にされることが多いが、今後は製品の信頼性や実用性が重要なポイントになるだろう。(編集担当:松田渡)