2019年4月から働き方改革関連法が順次施行され、大企業については既に時間外労働の上限規制が導入されており、中小企業についても今年4月から導入予定となっている。
この残業規制の成果について昨年12月31日に日経新聞が「働き方改革 減った残業代『社員に還元せず』5割」という記事を掲載した。この記事は日経新聞社が昨年9月に国内主要企業の経営者を対象として残業規制が導入された後の4月~6月の残業の状況について調査した結果を基に書かれたものだ。
6日、この記事に関して産業医サービスのバラゴンが調査結果データをさらに詳細に計算し直したレポートを発表した。
レポートによれば、記事のタイトルでは残業削減の成果を社員に還元しないのは5割の企業で残りの5割は還元しているかの印象を与えるが、再計算の結果、従業員に還元している企業の割合は全体の4.8%にすぎないことされる。
計算内容を見ると、調査に回答した企業は145社、うち残業が減ったと回答した企業は50社となっている。つまり、残業規制導入以降に残業が減った企業の割合は34.5%に過ぎず65.5%の企業では残業が減っていないと言うことになる。
では記事タイトルの5割はどのような計算から導かれたのか。残業が減ったと回答した企業50社のうち従業員に何らかのかたちで利益を還元した企業は7社で残業が減ったと回答した企業の14%のみだ。
日経記事ではこの7社に加え実施を検討している企業11社を合わせた18社が還元を実施した、または実施を検討している企業とされている。この18社の還元の内訳を見ると、ボーナスへの上乗せが4社、基本給への上乗せと各種手当の支給が共に3社となっており、合計10社が残業代減少分の補填を行うか行うことを検討している企業とされている。この18社中の10社の割合55.6%が日経記事のタイトルの5割の意味ではないかとレポートは推測している。
実際に従業員に還元を行った企業は7社で回答企業の総数は145社であるから、その割合は4.8%に過ぎないことになる。レポートでは統計学的に信頼区間を95%に設定した場合4.8%という数字は5%より小さく棄却されるべき数字で、日経新聞の調査データからは「従業員に還元した企業は出ていない」と解釈される程度のものだと結論している。
生産性向上の実績という観点からは残業規制による成果はほとんど現れていないという現状のようだ。(編集担当:久保田雄城)