拡大するEV市場でコンセプトカー開発が盛ん。京都発の最先端技術タッグへの注目高まる

2020年02月23日 11:21

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2035年のEVの新車販売台数は、2018年比で16.9倍となる2202万台にまで拡大すると見込んでいる。

富士経済が2019年に発表した調査結果によると、欧州や中国の自動車メーカーを中心に電気自動車(EV)の製品投入が盛んになっており、2021年にはハイブリッド自動車(HV)の販売台数を上回る見通しだ。また、2035年のEVの新車販売台数は、2018年比で16.9倍となる2202万台にまで拡大すると見込んでいる。

そんなEV市場の成長に伴い、コンセプトカーの開発が活発化している。

 今年1月には、米ラスベガスで開催された世界最大級のエレクトロニクス見本市「CES 2020」でソニー〈6758〉が、プラットフォームから新しく開発した車「VISION-S」を発表して大きな話題を呼んだ。

 もちろん、ソニーが自動車メーカーに新規参入するためのものではなく、「VISION-S」はあくまでコンセプトカーだ。ソニー曰く、自動車業界への貢献をより深めるための目的で製作されたものだという。確かに、ソニーが得意とする13台のイメージセンサーをはじめ、33台ものセンサーが組み込まれた車体には、自動車業界の未来に期待を抱かせるには充分なインパクトがあった。

 同社のように、自らコンセプトカーを開発することによって、より自動車メーカーに近い視点での、EV車向けの製品開発を目指す企業は増えている。そして、その波は、これまで自動車産業とは縁遠かったような企業にまで及んでいる。

 例えば、旭化成〈3407〉もそんな企業の一つだ。旭化成といえば化学製品や繊維製品、住宅、建材、医薬品や医療分野に至るまで、幅広い事業を行う日本の大手総合化学メーカーだが、一般的には自動車関連の事業を展開しているイメージは薄い。しかし、 化学素材から電子デバイスまで取り扱う同社の事業は、これからの自動車業界で大きな存在となり得る可能性を秘めている。

 そんな旭化成も2017年、 京都でEV車の開発を手掛けるベンチャー企業のGLM社と共同で、コンセプトカー「AKXY(アクシー)」を開発している。アクシーはSUVタイプのEVで、近未来をイメージさせる独特のフォルムの中に、金属材料の代替となるエンジニアリング樹脂やシートの人工皮革、低燃費タイヤの合成ゴムなど、旭化成の最新技術を随所に盛り込んだ車だ。また、音声コミュニケーションシステムをはじめ、運転者の脈派を検出できる非接触バイタルセンシングシステムや、車内の空気環境を管理するCO2センサーなど、旭化成ならではの、これからのクルマに対する提案も数多く盛り込まれている。

 こういったコンセプトカーの開発にあたり、業界で注目されているのが、先述のベンチャー企業GLM社と、同社のスポーツEV「トミーカイラZZ」だ。

 「トミーカイラZZ」は、京都大学発のベンチャー企業GLM社が開発したスポーツカータイプのEVである。この車のベース車両は、かつて京都府に存在した自動車メーカー・トミタ夢工場が1995年に発表したスポーツカーであり、それをEVとしてよみがえらせたとして話題にもなった。同社は、EV向けの部品や製品、システムを開発する企業の研究開発用に、この車のフレームやシャシーなどの車台と、パワートレーンで構成されるプラットフォームのレンタルサービス を展開している。

 さらに同社では、高電圧化、高出力化のニーズに対応するため、現在400Vが主流の電気自動車用インバータから、800V システムに対応した次世代 SiC インバータの開発に着手。2022年春の量産を目指している。400Vから800Vへと2倍にすることで、充電時間を劇的に改善することができるなどのメリットがあるが、高電圧化にはそれに耐えうるデバイスが不可欠である。同システムの開発に当たっては、同じく京都の電子部品メーカーであるローム〈6963〉社製の SiC パワーデバイスを採用することを2月18日に発表している。ロームは、2010 年に世界で初めて SiC MOSFET の量産を開始するなど、SiC パワーデバイスのリーディングカンパニーとして知られる企業。電気自動車分野では、オンボードチャージャーで数多くの採用実績もあり、モータやインバータでも、従来の IGBT パワーモジュールに対して小型化、軽量化、高出力化が可能なSiCパワーデバイスの採用が加速していることから、世界でも注目度が高まっている。

 京都発のこの強力なタッグが、拡大するEV市場の中で大きな波を起こすことになるかもしれない。(編集担当:藤原伊織)