インターネットはテレビを超えた 総務省調査が映す日本人の情報行動

2026年06月28日 19:02

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スマートフォンを利用する人。総務省の調査では、インターネット利用時間が全年代平均でテレビ(リアルタイム)視聴時間を上回る傾向が鮮明となっている。

今回のニュースのポイント

総務省情報通信政策研究所が公表した「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査(令和7年度)」によると、全年代の平均利用時間および行為者率において「インターネット利用」が「テレビ(リアルタイム)視聴」を上回り、その差を拡大しつつある傾向が明確になりました。若年層を中心に自由時間の大半がネット環境へ配分される一方、高齢層では依然としてテレビが圧倒的な存在感を誇るなど、世代間の情報接触の分断も鮮明です。この推移は、日本人が「何に時間を使い、どこから情報を得るか」という社会構造そのものの大きな転換点を示しています。

■ 「テレビ離れ」が公式統計で裏付けられた
 「テレビを見る時間よりも、スマートフォンを操作する時間の方が長い」。私たちが日々の暮らしの中で抱くこうした実感は、今や個人の主観にとどまらず、国の厳格な公式統計によって確固たるファクトとして裏付けられました。総務省情報通信政策研究所が取りまとめた最新のメディア利用動向調査において、日本人の情報接触の中心がテレビからインターネットへと移行した実態が浮き彫りとなっています。

 本調査の時系列データを精査すると、全年代の平均利用時間において、インターネットはテレビ(リアルタイム)視聴を明確に超過し、年を追うごとにそのアドバンテージを広げつつあります。一日に実際にそのメディアに触れた人の割合を示す「行為者率」の推移を見ても、平日・休日ともにインターネットがテレビを上回る傾向が定着しました。かつてマクロ経済の世論形成や消費の起点として君臨し続けた地上波放送を中心とするテレビメディアの相対的な地位低下が、定量的なマクロデータとして立証された形です。

■ 変わったのは「メディア」ではなく「時間の使い方」
 今回の統計を読み解く上で重要なのは、単にメディアの勢力図が塗り替わったという「勝敗」の次元ではありません。本質的な変化は、日本人の24時間という限られた可処分時間、特に「自由時間」の配分構造そのものが根本から組み替えられたという点にあります。

 利用項目別の内訳を見ると、インターネットの用途は「動画投稿・共有サービスを見る」が平日・休日ともに全年代で最も長く、平日は「メールの送受信」、休日は「ソーシャルメディアの利用」がそれに続いています。動画、SNS、ニュース閲覧、メッセージングなど、かつては分散していた個人の知的・娯楽的行動が、今やモバイル機器を中心とするネット環境のプラットフォーム上へと一斉に再配分されています。時間は誰にとっても一日24時間しか存在しません。インターネットの独占時間の伸長は、日本人の生活様式や情報に対する身体的な向き合い方が、平時から構造的に変容したことを物語っています。

■ 世代ごとに異なる「情報の入り口」
 一方で、この統計は日本国内における「情報接触の世代間分断」という新たな構造的課題も提示しています。年代別の利用時間を精査すると、10代から20代の若年層では平日のインターネット利用時間が200分を大きく超える一方、テレビの視聴時間は50分を割り込む水準まで減少しています。しかしその対極として、平日の60代および70代、休日の50代から70代では、テレビの視聴時間がインターネット利用時間を依然として大きく超過しています。特に70代においては、平日・休日ともにテレビのリアルタイム視聴時間が300分を超えるという突出した高水準を維持しています。

 「世の中のできごとをいち早く知る」ための媒体として、10代から50代はインターネットを挙げるのに対し、60代・70代はテレビを選択しています。このデータが示すのは、もはや一つのメディアが全世代の世論や流行を一括してカバーする時代は終焉を迎えたという現実です。世代ごとに情報の入り口が完全に分離したマクロ環境下では、企業の広告戦略やマーケティングのみならず、行政の災害情報発信や世論形成のあり方も、この世代間の非対称性を前提に再設計することが求められます。

■ 情報行動の変化は経済も動かす
 人々がどこで時間を消費し、どこから知的インプットを得るかという問題は、メディア業界内だけの局所的な変化にとどまらず、マクロ経済全体を動かす巨大な地殻変動に直結します。情報の入り口が変わることは、そのまま産業資本の流動ルートが書き換わることを意味するからです。

 個人の認知や購買プロセスの大半がネット空間へ移行したことを受け、マクロ経済における広告費の配分はデジタルシフトを一段と加速させています。今回の調査でも、全年代におけるスマートフォンの利用率は95.9%に達し、70代でも83.8%まで上昇していることが確認されました。全世代的なスマートデバイスへの接触定着は、商品購買行動の最適化を促す一方で、地方のオールドメディアや各種印刷媒体の収益基盤に深刻な地盤沈下をもたらしています。情報行動の変化は、そのまま企業のサプライチェーン、採用活動、さらには金融市場における投資家心理や選挙の投票行動にいたるまで、社会のあらゆる意思決定システムを背後から静かに規定しています。

■ 次に変わるのは「ネットの中身」か
 今回の報告書が明確に示したのは、日本の社会構造が「テレビ中心」から「インターネット中心」へと本格的かつ不可逆にシフトしたという到達点です。しかし、歴史的なマクロ潮流の視点に立てば、この転換もまた次なる進化への通過点に過ぎない可能性があります。

 現在のインターネット空間の主役は動画共有サービスやSNSですが、その背後では生成AIの急速な台頭による次なる構造変化の地鳴りが響き始めています。今回の総務省情報通信政策研究所の白書は、生成AIや対話型AIそのものの利用時間を直接の独立した分析対象としたものではありません。しかし、人々が検索エンジンや既存のニュースサイト、あるいは従来のテキストメディアを経由することなく、情報の取得を行う動きは広がりを見せており、今後はAIが情報取得手段の一つとして存在感を高める可能性があります。数年後の白書においては、情報取得手段の決定的な変数として、AIの存在感が日記式調査の項目へどのように位置づけられるかが、最大の焦点となる公算が大きいです。

■ 情報社会は新たな転換点へ
 総務省の調査結果は、日本経済と国民の暮らしを支える情報インフラの主軸が、名実ともにインターネットへと完全に移行した現在地を静かに、しかし力強く証明しました。この変化はゴールではなく、日本社会が新しい情報エコシステムを運用し始めるスタートラインを意味しています。

 今後は、巨大なネット空間の中で人々がいかにしてファクトを厳選し、生活の質や生産性を向上させていくのか。そして、少子高齢化が進む我が国において、このデジタル化された時間の集積が、国内の労働市場の効率化や次世代の人材育成、さらには新たな産業構造の創出へとどう昇華されていくのか。単なるテレビとネットの比較を超え、新しい情報テクノロジーが国民の時間をどう豊かに変革していくのか、その実務的な軌跡を冷静に見極める時代に入っています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)