新型コロナウイルス感染拡大の影響で、大きな展示会や見本市が軒並み「オンライン」化へ踏み切っている。アジア最大級のメカトロニクス、エレクトロニクス及びそれらに関連する専門領域の展示会として知られる「TECHNO-FRONTER」もその一つだ。
TECHNO-FRONTERは、モータや電源、センサなど、今の世の中の最先端を支える要素技術から、製品設計に関するソリューション技術まで、幅広い製品・技術の展示紹介と、最新の技術動向が学べる技術シンポジウムが同時開催されるイベントとして、研究開発や設計に関わるエンジニアから多大な支持と高い評価を得ているイベントだ。
来場者の半数以上をエンジニアが占める、他に類を見ない専門技術展で、2019年度は450以上の企業・団体が出展し、3日間で延べ2775名の研究・開発・設計のスペシャリストが参加。 うち約65%のプロフェッショナルが展示会場に入場し、出展者との活発な技術交流・商談がなされたという。今年度も4月に開催が予定されていたが、コロナの感染拡大を懸念して、主催者である日本能率協会が3月に中止を発表した。同協会では秋に展示やシンポジウムから成る関連イベントの開催を検討していたが、未だ状況は収束していないことから、リアルを断念し、2020年9月8日(火)から18日(金)の10日間にわたって「TECHNO-FRONTER(テクノフロンティア)バーチャル展示会2020」の初開催に踏み切った。メカトロニクス、エレクトロニクス、開発設計DX、ものづくりIoTなど112社がこれに賛同し、出展している。
大きな会場に大勢の人が集まる熱気こそ感じられないものの、バーチャルにはバーチャルならではの利点も多い。
バーチャル展示会の最も大きなメリットは、世界中のどこにいても、参加登録さえすればすぐに展示を見て回れる点だ。わざわざ日程を合わせたり、時間を作ったりして会場に足を運ばなくて済むので、これまで参加できなかった人も参加しやすくなる。他府県の企業や人にとっては交通費等々の削減にもなるし、在宅での見学も可能なので、ハードルはぐんと下がるだろう。また、広い会場を行き来するわけではないので、短時間での高速巡回も可能。限られた時間の中で、これまでよりもより多くの企業の最先端のテクノロジーに触れることができる。
今回の「TECHNO-FRONTIER バーチャル展示会 2020」では、展示ブースをメカトロニクス、エレクトロニクス、対策技術のほか、特集ゾーンとして、次世代自動車、IoT、DX、AI/Roboticsの8部門にカテゴライズし、サイト上に見やすく配置しており、それぞれのイラストをクリックすることで、それに対応する各企業の出展ブースが表示されるようになっているので、ネットに不慣れな人でも、そう苦労はしないだろう。また、そこからさらに専門技術別にカテゴライズされているので、見学したい展示を絞り込むことも容易にできる。例えば、「メカトロニクス」をクリックすると、ローム〈6963〉やSTマイクロエレクトロニクスなどの企業、計42社が表示され、さらに「モータ技術」や「モーション・エンジニアリング」などで絞り込むといった具合だ。
各企業の展示は、基本的には動画と、各技術の概要、会社概要や資料のダウンロードリンクで構成されているが、各企業ごとに見せ方は異なっている。
例えば、多くの企業が一つの動画のみを挙げて紹介しているのに対し、半導体メーカーのロームでは各技術ごとの動画を用意し、同社の技術の特徴を詳しく解説している。リアルな展示会場なら、立ち止まって動画を見ることも少なく、展示ブースの飾りのようになりがちだが、オンラインならば、時間のある時に腰を据えてじっくりと視聴することができる。より深い理解を得るためにも、オンライン開催と動画の利点を上手く利用している好例と言えるのではないだろうか。
また、各ブースのページでは、展示内容に沿った自学自習資料が無料配布されており、必要な資料がいつでも気軽にダウンロードできるということも、オンライン展示会のメリットの一つだろう。最終日には9月28日~10月2日までの会期延長も発表されたが、こうした柔軟な対応もオンラインならではだ。
コロナが落ち着いても、しばらくの間は、以前のような大規模な展示会の開催は難しいといわれている。世界中でもオンライン展示会の動きは活発になってきており、アフターコロナでも活性化することが予想される。そんな中、エレクトロニクス業界に限らず、自社の製品やサービス、技術をオンライン上でいかに分かりやすく、かつ魅力的に見せるのか、そして他社の展示ブースとの差別化をどのように図っていくのかということが、リアルな展示会以上に必要になってくるのではないだろうか。
日本の企業は他国に比べてオンラインの導入が遅れているともいわれているが、それではこの先、どんなに優れた技術をもっていたとしても、埋もれてしまうかもしれない。日本のモノづくり企業にはぜひ、オンライン展示ブースの「魅せ方」にも注力してもらいたいものだ。(編集担当:藤原伊織)