世間ではすっかり忘れられてしまった感じも否めないが、本当ならば今頃は、日本中が東京オリンピックの開催を控えて、大いに盛り上がっていたであろう時期だ。
そんな中、株式会社セガがAndroid/iOS向けのゲームアプリ「ソニック AT 東京2020オリンピック」を2020年5月7日より全世界に向けての配信開始した。同ゲームは、セガの人気キャラクター「ソニック」とその仲間たちが様々なオリンピック競技にチャレンジするという内容で、もちろん、当初は東京オリンピックの開催に合わせて開発されていたものだろう。同社では発売を延期せずにあえてこの時期に発表したことについて、ゲームの公式サイト内で「こんなときだからこそ、世界中のみなさんに笑顔を提供したい」と記している。
東京オリンピックだけでなく、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、国内の見本市や展示会、コンサートやイベントなど、開催が予定されていた様々な催しが中止、または延期となった。しかし、その中には、オンラインでの開催に変更する主催者も出てきている。
例えば、4月22日の地球のことを考えて行動する日「アースデイ」を祝して、「地球のことを考え、行動する日」を合言葉に2001年から毎年、代々木公園を中心に開催されてきたイベント「アースデイ東京」も、早々にオンライン開催への変更を発表。4月20日にオンライン配信でのイベントを敢行し、22日からはアーカイブ配信も始めている。当然、ライブイベントとしての臨場感には欠けるものの、イベントの趣旨である、多様ないのちがつながり合いや、ともに生きる持続可能な社会を目指すことを広めるためにはむしろ、参加者が限定されるライブよりも、全国から気軽にアクセスできるオンライン開催の方が向いているのかも知れない。
また、国内最大規模のゲームイベントとして知られる「東京ゲームショウ2020」(9月:幕張メッセ)も中止を発表。しかし、主催者である一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会では、オンラインによる開催方法を検討するとしており、詳細は5月下旬ごろから順次、公式サイトなどで発表される見通しだ。こちらも楽しみにしていた人にとっては残念なお知らせであるのは間違いないだろう。しかし、オンラインゲームなどが主流となりつつある昨今、その最先端の発表の場となるゲームショウが、どんな魅せ方を工夫してオンライン開催を行うのか楽しみでもある。
中止されたイベントの中には、主催者以外にも、そこで発表する予定だったものを独自にオンラインで披露する企業もある。メカトロニクス、エレクトロニクス及びそれらに関連するアジア最大級の展示会「TECHNO-FRONTER」も、4月8日に東京ビッグサイトで予定されていた今年の開催が中止となったが、電子部品メーカー大手のローム株式会社〈6963〉はこれを受け、同社の公式サイト上に「TECHNO-FRONTIER2020 Virtual Booth」を設置。 出展予定だった製品やソリューションの一部を公開している。
同サイトのページでは、電動化や自動化が加速する、産業機器・自動車分野などで注目されている最新のSiCパワーデバイスの各製品や、同社が誇るアナログ技術を集積した、電力・電源システムなどの技術が一堂に紹介されている。カタログもPDF形式で公開され、同社の今イチオシの技術を知ることできる。同社以外にもバーチャル展示を行う企業は増えている。コロナ以降でも今後、実際の展示会を補完するツールとして、バーチャル展示ブースは一般化するかもしれない。
新型コロナウイルスが我々の生活に与えている影響は大きいが、感染防止策としてやむなく始められたものの中には、これまでの働き方や見せ方などを大きく変えるようなものもある。逆境をはねのけた先に、新しい価値が生まれはじめているのかもしれない。(編集担当:藤原伊織)