新型コロナウイルスは私たちに健康被害をもたらすだけでなく、これまでの生活の価値観や働き方まで変えつつある。
緊急事態宣言が解除され、普段の生活リズムが戻ってきたとしても、以前と全く同じというわけにはいかない。少なくとも、治療薬などの対策が見つかるまでは、人と会ったり、人が密集するような場所に出かけたりといった行動は、なるべく控える方が賢明だろう。
幸いにも、現代社会にはインターネットという文明の利器がある。たとえ自宅に居ても、つながりあえる手段はあるし、今回の自粛期間の間も、オンラインでのテレワークやWEB会議、WEB上での名刺交換など、インターネットを利用する新しい生活様式がいくつも発展した。
また、経済打撃が深刻さを増す中でも、こういった先端技術を活用した様々な取り組みで、状況打破を考えている企業も増えている。
例えば、住宅メーカーの積水ハウス〈1928〉は、VRやWEB会議を使った住宅相談サービス「おうちで住まいづくり」を始めた。新型コロナウイルスの感染防止で来店の機会が減る中、対面せずに接客できるWEBの活用は顧客にとっても有難いサービスとなりそうだ。また、感染防止だけでなく、子育てが忙しくてゆっくりと打合せがしにくい家庭や、仕事でなかなか時間がとれないような人にとっても有効だろう。
同社では、スマートフォンを装着してVR体験ができる「VRスコープ」と、プランの希望を整理できる「ヒアリングツール」、住まいづくりのノウハウが詰まった「住まいづくりの教科書」を希望する顧客に無料配布。同社の最新仕様の住宅や、実際に建築された豊富なプランニング実例を360°VRでバーチャル体験できるサービスを提供している。これならば自宅に居ながらにして、オンラインでモデルルームを内覧できる。さらに、希望のプランを作成してもらい、こちらもVRで立体的な空間を確認することができる。在宅勤務によって住宅で過ごす時間が増え、自らの住まいの気になる点、新たな気付きを感じている人も多いだろう。ゆっくり住まいに向き合う良い機会ではないだろうか。4月の資料請求は前年比で約2倍に増えているという。コロナ禍が収束したあとも、便利なサービスとして定着しそうだ。
他にVRを使ったビジネスサービスで昨年話題となったものとしては、株式会社ジョリーグッドが展開している「VRしごと体験」がある。同サービスは、ディップ株式会社が主催する就職・転職フェア「しごと発見フェア」にて披露されたもので、VRで事前に興味のある企業の業務内容や職場の雰囲気をバーチャル見学できるというものだ。参加者にも好評で、同サービスを導入した企業の面談数は、導入していない企業と比較して1.3倍にアップしたという。
また、VRは学習の場面でも導入が進んでいる。例えば、英語力の向上を目指すビジネスマンの中で話題になっているのが、日本英語検定協会がリリースしている「売り場のやさしい英会話VR」だ。これは英検が公式に展開しているアプリで、接客業種の人に向けた非常に実践的な英語学習用VRコンテンツだ。スマホでダウンロードすれば、一部無料でも利用できる。バーチャル空間でリアルに近いシチュエーションで英語を学ぶことができるので、紙や音だけで学習するよりも能率が格段に上がる。自粛生活の時間を利用して、英語スキルを伸ばすにはもってこいだ。
連日、悲観的なニュースばかりが流れて気が滅入っている人も多いだろう。非常事態宣言が解除されても、不安が拭えるわけではない。新型コロナウイルスが我々の社会に及ぼす影響は、まだこれからも増していくだろう。でも、そんな中でも前向きに考えたいものだ。WEBやVRなどの最新技術は、サービスを提供する側にとっても、提供される側にとっても、希望の光となるかもしれない。(編集担当:藤原伊織)