政府の「エネルギー基本計画」では2030年度に風力発電が総発電電力量に対して占める割合を1.7%程度、導入設備容量としては10GW、うち洋上風力は0.8GWとされている。この10年に諸外国では諸制度が整備されるなど積極的な洋上風力発電の推進が行われてきたのに対して日本の取り組みは大きく遅れをとっていると言われてきた。そんな中で昨年19年に「再エネ海域利用法」が制定され、洋上風力発電の諸要件を満たす一般海域の区域を促進区域と指定するなど洋上風力発電普及に向けた環境整備が始まった。
9月24日に矢野経済研究所が洋上風力発電市場の調査レポートを公表しているが、これによれば、20年度中に洋上風力発電の建設工事等の新設に係る業務が開始される見通しであり、その市場規模は20億円程度になるものと予測されている。陸上風力発電については適地がほぼ無くなってきていると言われており、1計画で原発1基分に相当する大規模な再生可能エネルギー発電所である洋上風力発電に期待が集まっている。
現在の洋上風力発電所の計画では漁業関連者との調整の他、環境への影響評価や事業化調査等を含む全ての準備作業を事業主体が行うことになっているが、民間事業者がこれらを全て自力で行うためには巨額のコスト負担や調整に要する手間や時間等の多くのハードルが存在する。しかし、こうしたハードルが高すぎては事業化に辿り着けない可能性も出てくる。そこで現在望まれているのは既にオランダで採用された先例のある「セントラル方式」という方式だ。これは事業者が事前の調整等を負担せず発電所の建設から取り掛かれるようにするため、促進区域については国が各種調査や調整を事前に進めておく方式だ。
こうした手続きを前提に、本年度中に建設工事等の新設に係る業務が開始される見通しで、20億円程度の規模から立ち上がっていく見込みである。21年度以降には新設工事が順次本格化して行き、23年度には発電所の運転が開始される見通しとなっている。洋上風力発電はその後も継続的に新設容量が拡大していくと見込まれ、その市場規模は25年度には3970億円、30年度には9200億円までに達するとレポートは予測している。(編集担当:久保田雄城)