炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)。EV・自動車用途を中心に市場拡大

2020年05月24日 11:26

画・炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)。EV・自動車用途を中心に市場拡大。

富士経済が炭素繊維複合材料の世界市場を調査。19年のCFRP市場は1.5兆億円、前年比4.8%増。航空機、風力発電、自動車用途などで採用

 欧州を中心に自動車によるCO2排出量の規制が強化されている。この流れは今後世界的に波及する見込みで自動車メーカーにとってはCO2排出量削減のための車輌製造の技術革新が大きな課題となる。

 CO2排出量削減のための車両として注目を浴びているのがEV(電気自動車)やハイブリッド車などの次世代エコカーだが、これらの製造には軽量性と耐久性、耐衝撃性をもった金属に変わる素材が必要だ。その代替材料となるものが炭素繊維複合材料で、その代表はCFRP(炭素繊維強化樹脂)だが、これは熱硬化性のためリサイクルが難しい。この点からリサイクルを考慮したCFRTPP(熱可塑性炭素繊維強化樹脂)も注目されている。

 総合マーケティング業の富士経済がこれら炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)の世界市場を調査、その結果を「炭素繊維複合材料(CFRP/CFRTP)関連技術・用途市場の展望 2020」として取りまとめ、一部を13日に公表している。

 レポートによれば、2019年におけるCFRPの市場規模の見込額は1兆4999億円で前年比4.8%の増加となっている。自動車用途、航空機、風力発電ブレードを中心に採用されており、中でも風力発電ブレード用途で需要が増加している。自動車用途は自動車メーカー各社がCFRP利用技術の研究開発を進めており、近年はEVへのシフトの影響から電池ケース向けの研究開発が活発化している。

 また風力発電ブレード用途では欧州やアジアで洋上風力発電プロジェクトが進行しており5MWから10MWクラスの大型ブレードの軽量化を図るためにCFRPの採用が有力視されているようだ。こうした需要拡大傾向から35年の市場規模は3兆8548億円、18年比2.7倍まで達すると予測している。

 CFRTP市場は19年に546億円、前年比5.2%の増加が見込まれている。ATMなどの自動機器やギアなどの静電・摺動部品を中心に射出成形部品が採用され、今後は車載カメラやレーダー、センサーにおける誤作動防止のための電磁波シールド用部品への採用が増加する見込みだ。さらにセンサー搭載家電の増加に伴い家電分野においても電磁波シールド用部品への採用が期待されている。また、25年から30年にかけては自動車用途での骨格・構造部品での採用が本格的に進むと予測される。

 こうした見通しから35年におけるCFRTPの市場規模は3703億円で18年比7.1倍にまで達する予測だ。(編集担当:久保田雄城)