日本学術会議の会員任命を巡る政府説明が二転三転している。加藤勝信官房長官は12日の記者会見では、菅義偉総理の杜撰(ずさん)な対応責任さえ問われることになる説明を行った。
加藤官房長官は、日本学術会議から出された会員推薦名簿は総理決裁起案書に「参考資料として添付されていた」が「総理は参考資料までは詳しく見ていなかったということだ」などと説明した。
日本学術会議法7条は「同法17条規定による(日本学術会議の)推薦に基づき、内閣総理大臣が任命する」となっており、参考資料扱いではなく、推薦名簿そのものに基づき、総理が任命することになっている。
加藤官房長官の説明は、菅総理が「原本」ともいえる推薦名簿を「詳しく見ていなかった」と説明しており、菅総理が9日の内閣記者会インタビューに応じた際「6人の名前は見ていない、99人だった」と説明しているが、決裁を求める起案書に「参考資料」(日本学術会議推薦の105人の名前を掲載)が添付されていたことや「参考資料」を見たかどうかには触れていない。6人の名前を総理は本当に見なかったのか、これにも疑義が生じる。
加藤官房長官が語る日本学術会議提出の推薦書(8月31日提出)のあて先は日本学術会議法と内閣府令に基づき「内閣総理大臣」に提出されたものであり、参考資料とした扱いを含め、総理の任命手続きの杜撰(ずさん)さは問題になりそう。
また菅総理は「法に基づき、総合的、俯瞰的見地から判断した」と任命の正当性を主張しているが、この点でも起案書添付資料さえ、ろくにチェックせずに任命したのか、学術的成果を含め、科学者としての実績・成果を総理が判断できるのか、これまでの説明との整合性も含め、問われることになる。
また、参考資料として起案書に添付されていたものの、起案書には6人の名前が外されていたことから、何者かが6人を削除したとすれば首相の任命権と日本学術会議の選考権を侵害したことになる、と専門家は問題提起する。(編集担当:森高龍二)