政府は7月下旬、2018年10月に景気拡張が終わり、以後後退局面に入ったことを認めた。リーマン・ショック後、日本経済は震災後の一時期を除いて回復基調で推移してきたが、これには10年サイクルの設備投資循環やDX化などのIT投資、復興やオリンピック関連の再開発投資が寄与している。しかし、18年後半からの後退は米中摩擦による中国経済の減速により、日本の景気を牽引してきた生産関連製品の輸出が大幅な落ち込みをみせたことにあると想像される。
それでは各業種の企業業績についてはどうか。4日に、東京商工リサーチが07年から19年まで業績比較が可能な20万8215社を分析した「リーマン・ショック後の企業業績調査」の集計結果を公表している。これによれば、リーマン・ショックにより全企業の売上高は07年を100として09年度には84.1まで落ち込んだものの、18年度に100.0まで回復、19年度は100.8となり、ショック以前の水準に回復している。
利益では08年度に15.2まで大幅に落ち込んだが13年度には100.0に回復、その後も100.0以上で推移し19年度は135.9だった。ただし、上場企業が142.0に対し非上場は129.0にとどまり回復の度合いに格差があるようだ。
産業別に売上高の推移を見ると、非上場では建設業が14年度に100.0を回復し、19年度は116.9を確保し最も高く、運輸業が19年度で116.7と続いている。小売業や農・林・漁・鉱業は19年度に至っても100.0まで回復していない。一方、上場の小売業ではショック後も一貫して100.0を上回っており、大手チェーンの寡占化やネット通販の台頭で非上場の小売業が圧迫されている様子がうかがえる。
不動産業では上場の不動産業が19年度139.3まで達したのに対し、非上場は109.1で大きな開きがある。五輪関係で都市部の地価が高騰し、大手は資本力を背景に大型開発を進めることができたことが要因と考えられる。
利益についても非上場では不動産が19年度495.7と最も高くなっているが、上場では827.6とやはり大きな格差が出ている。非上場小売りは19年度で68.8と低水準のままだ。人手不足、人件費高騰で利益が圧迫されたことが要因と考えられる。一方、上場では19年度に135.3と回復しており、やはり大きな格差がみられる。コロナ禍でこうした格差はますます広がって行くと懸念される。(編集担当:久保田雄城)