一般社団法人日本電機工業会(JEMA)の発表した統計データによると、冷蔵庫・洗濯機・乾燥機・炊飯器などのいわゆる「白物家電」と呼ばれる生活家電の昨年の国内出荷額は2兆1942億円だった。これに対し、これまで日本の電気産業を支えてきたテレビをはじめとするデジタル製品「黒物家電」の出荷額は1兆6054億円に留まっている。
花形だった黒物家電と、どちらかといえばこれまで二軍扱いをされてきた白物家電の出荷額が10年ぶりに逆転した形となったわけだが、これにはいくつかの大きな理由がある。
まず一つめは、地デジ完全移行による買い替え需要の反動で、テレビやその周辺機器が売れなくなってしまったこと。しかも、この販売不振は今後も長期的に継続するとみられているため、しばらくの間は、白物家電が電機メーカーの主要な収益源として、デジタル家電の落ち込み分を下支えする構図が続きそうだ。
白物家電好調の理由の2つめは、メーカーの商品提案の変化である。技術革新による機器の高機能化と、メーカー側の提案や開発コンセプトが多様化したことにより、従来では夏にしか売れなかったような白物家電が通年で売れるようになったことが大きい。例えば、これまでは夏場にしか売場に並ばなかったような扇風機も、節電につながる提案商品としたことで、冬場でも売り上げを伸ばしている。シャープ<6753>の3Dファンシリーズなどは、そのコンセプトの典型的な商品で、アホウドリの翼を応用した送風効率のよい羽根形状のネイチャーウイングと、上下左右自動制御の首振りでエアコンや他の暖房器具との併用時も、室内の空気を効果的に攪拌できることをウリにしている。また、東芝 の扇風機・サイエントシリーズも同様で、7枚の羽と立体首振りで部屋の空気を循環させるのはもちろんのこと、ACモーターに変えて先進のDCインバーターモーターを採用することで、消費電力を半分以下に低減し、平成23年度の省エネ大賞も受賞している。
また、扇風機だけでなく、美容家電の除毛機なども、ムダ毛の気になる夏の本番より前のケアを提案することで、冬の商戦でも売り上げを伸ばしている商品がある。昨年5月に発売した、パナソニック<6752>の除毛器・光エステは、むだ毛を短くカットしたうえで特殊な光を照射し、毛根を休眠させる効果をうたったことで、同社の販売予想を1.5倍も上回る売れ行きを見せており、冬に入っても好調を持続。一般的な除毛器の約2倍のペースで売れ続けているそうだ。
不況といわれ続けて久しいが、白物家電の売れ方を見る限り、消費者目線に立った提案力でアプローチすれば、購買意欲を掻き立てることは、まだまだ可能なようだ。(編集担当:樋口隆)