集団免疫への近道は「職域接種」! 加速するワクチン接種の今

2021年07月06日 06:43

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厚生労働省の発表によると7月2日現在、新型コロナワクチンの累計接種回数は全国で4746万回に達した

 昨年から猛威を振るい続ける新型コロナウイルス。対策の切り札といわれるワクチン接種がオリンピックを前に急ピッチで進められている。厚生労働省の発表によると7月2日現在、新型コロナワクチンの累計接種回数は全国で4746万回に達したそうだ。各地で大規模な接種会場が増設されていることなどもあって1日辺りの接種回数は順調に伸びているようだ。

 企業や大学などの職域単位でワクチン接種を行う「職域接種」も6月21日から始まった。

 予想を上回る申請があったため6月25日には新規の申請受付を一旦休止する事態となったり、一部の企業や学校が優先的に接種できることに対して「公平性」を指摘する意見もあるが、この緊急事態において、最も優先されるべきは一日も早く、コロナ禍を鎮静化させることだ。ワクチン接種の順番を首を長くして待っている人たちが公平性を主張する気持ちも分からなくはない。しかし、効率よくワクチンを接種することは、ワクチンの順番待ちをしている人の感染リスクを下げることにもつながる。人口の一定割合以上の人が免疫を持って集団免疫を獲得できれば、もしも感染患者が発生しても広がりにくくなるからだ。そういう意味でも、自治体以外の窓口が確保でき、迅速に接種人口を拡大できる職域接種は非常に効率の良い施策だと言えるだろう。

 実際に職域接種の実績を見れば明らかだ。国内ハウスメーカーであるアキュラホームは、いち早く職域接種を開始した企業の一つだ。同社では、東京、大阪、名古屋に会場を確保し、東京会場では5日間で5000人に1回目の接種を実施した。8月初旬には、各会場を合わせて、約13000人に対して2回目の接種が終了する見込みだそうだ。対象者も従業員のみならず、関連する中小の工務店や、小規模取引先の従業員、及び家族など、職域接種の範囲を拡大している。今後30000人規模での職域接種に向け既に準備を開始していたが、昨今のワクチン不足報道を受け、まずは地方自治体でのワクチン接種が迅速に進む事が社会的に優先と考え、今回の申請分で終了するとしている。

 また、スマホアプリの開発・運営を手掛けるスマートニュース株式会社でも7月2日から職域接種が開始された。従業員や取引先企業などの関係者に加えて、会社のある渋谷区民や渋谷区就業者も受け入れることで、5000名規模の職域接種を実施する。これには渋谷区長も賛同し、渋谷区と「新型コロナワクチン接種に関する連携協定」が締結された。昼間人口の多い渋谷区の個性を捉えた取り組みとして、評価を高めている。

 職域接種をサポートする企業も出てきた。オンデマンド印刷やイベントプロモーションなどを手掛けるキンコーズ・ジャパン株式会社では、職域接種を実施する企業や大学などに向けて、会場設営を支援する「ワクチン接種会場設営サービス」を開始した。会場の空間構築や、印刷物の手配、会場動線のサイン設置など、同社がこれまでにイベントや展示会などで培ったノウハウが随所に生かされている。会場設営以外にも、運営誘導や清掃スタッフの手配など、職域接種が円滑に進むよう対応するという。

 ワクチンに対する考え方は人それぞれであり、強制されるべきものではない。ただ、職域接種をはじめとする官民の協力体制でワクチン接種が加速し、一日も早く集団免疫を獲得できれば、先の見えなかったコロナ禍にも、ようやく光が見えてくる。今が正念場だ。(編集担当:今井慎太郎)