日本経済は全体として持ち直し基調で推移している。2018年秋からの後退局面も昨年春には底を打ち回復局面に入っている。中国や米国など世界経済の回復を受けて輸出型を中心に製造業は好調だ。20年初頭からの新型コロナ感染症の影響で一時低迷した経済もウイズコロナに適応し、その中でIT投資に牽引され設備投資も堅調だ。
しかし、繰りかえされる緊急事態宣言や自粛ムードの中で飲食や観光業など個人向けサービス消費は厳しい状況が続いており、景況感は業種により二極化している。米国などのケースを見るとワクチン接種が個人向けサービス消費の回復に大きく寄与しているようだ。日本は欧米主要国と比べワクチン接種で遅れをとったものの、自治体等の工夫もあり高齢者以外の接種も開始されるなどワクチン接種は加速しており早期の正常化も期待される。
7月5日に日本総研(日本総合研究所)がリサーチレポート「【日本経済見通し】コロナ禍から持ち直しに向かう日本経済~コロナ後に直面する2つの課題~」を公表している。この中で個人消費の分析と見通しが示されているが、これによれば、「11月中には集団免疫が獲得できるとされる国民70%への2回接種が完了する見込み」で「ワクチン接種が進むにつれて消費活動は正常化の度合いを強め、2022年初には、消費性向がコロナ前の水準(2019年度平均)をほぼ回復する」と想定している。
現在も飲食店等への活動制限は続いており、しばらくは個人消費がコロナ前を下回る状況が続く見通しだ。しかし、消費活動正常化のカギを握るワクチン接種は7月中に高齢者への2回接種が完了する見込みで、ワクチン接種が先行している諸外国の様子を見ると、2回の接種を終えた国民が半数以下にとどまる段階で外出機会が増加し消費活動が回復傾向に転じている。
レポートでは「日本でも、消費行動の慎重化が目立つ高齢者にワクチンが行き渡れば、消費が上向き始める公算大」としている。こうした想定を前提に「消費性向がコロナ前の水準に戻れば、個人消費は12兆円(4%)増加する計算に。このため、消費活動の正常化過程では、高めの成長率が実現」し、「2021年度後半にかけて、景気回復ペースが加速。2021年度末には、実質GDPがコロナ前(2019年平均)の水準を回復する」と予測している。(編集担当:久保田雄城)