世界中の企業・組織でDXが推進されている。DXという言葉は日本人には理解しにくい言葉だ。DXはDigital transformationの略だが、日本語に置き換えるならば「電子データ化による構造の変容」とでも言えようか。いずれにせよ抽象的な概念であり、企業組織全体のあり方にかかわる概念で、最終的な目的は企業価値を高めることにあると言えよう。単なる電子化はDXとは呼べず、電子化されたデータの運用のあり方、その最適化のための組織体制をも含んだ言葉だ。世界中でDXが推し進められている今、多くの企業が企業価値を高めるために「自社の処理能力を超えた量のデータが必要」という「データのパラドクス」と呼ばれる課題に直面しているという。
8月17日、デル・テクノロジーズが世界45カ国のデータ戦略・DX担当者を対象に実施した調査の結果レポートを公表している。これによれば、世界の企業の66%(日本では65%)が、自社をデータ・ドリブン(データにより駆動された)企業であると認識しながら、データを資本の一つと捉え全社規模で優先的に活用できている企業はわずか21%(日本では25%)に過ぎない。また、67%(日本73%)の企業が「より多くのデータが必要だ」としているが、同時に61%(日本:72%)が「現在のデータ量は処理できる範囲を超えている」と認識している。この「データのパラドクス」によって日本を含む世界の企業がデータの取り扱いと、そこから価値を引き出すことに苦慮しているとレポートは指摘している。
スキルギャップやセキュリティの脆弱性など多くの障壁により、集積された大量のデータは多くの企業にとって競争優位性をもたらすものではなくなり、むしろ負担となってきているようだ。この課題に対応するための企業のプランは、今後1~3年の間に「異常データの検出を自動化するためにマシンラーニングを導入する」が66%(日本75%)、「data-as-a-serviceモデルに移行」が57%(日本59%)、「パフォーマンスを精査してデータの処理および活用法を見直す」52%(日本45%)となっている。多くの企業がオンデマンド モデルに移行することでデータのメリットを得られると考えているものの実際に移行した割合は少数だという。レポートは「企業、テクノロジー、人、プロセスを圧倒する量とスピード、多様さが、このような『データのパラドクス』を助長」していると指摘している。(編集担当:久保田雄城)