岸田文雄総理は自由民主党総裁選でも、総理就任時も「国民の声が政治に届かない」「政治の説明が、国民の心に響かない」と強調し『民主主義の危機』を強調した。では「Dappi」を巡る自民党とのかかわりはどうだったのか。国民の疑問を受け止め、事実関係を確認し、迅速に、今週中にも、記者会見し、自民党総裁として疑惑に明確な答えを国民に示すべき。
あたかも一般市民の投じた「声」に見せかけ、実は企業に金銭を払って、特定政治家や野党の評価を下げる世論操作を与党関係者がネット工作していたとすれば、選挙の際に有権者の判断を誤らせる、まさに、岸田総理自身が憂うる「民主主義の危機」を自らの党関係者が作り出したと言わねばならない。
自民党関係者がネット工作にかかわってきた疑いが濃厚になっている。虚偽情報で野党や野党の特定議員への攻撃ツイートを繰り返したツイッター匿名アカウント「Dappi」の運営が個人でなく、法人が行い、その法人の得意先が「自由民主党」ということが明らかになった。
「Dappi」 は森友学園への国有地売却を巡る問題で、当時の安倍晋三総理の妻・昭恵氏の名前を公文書から削除するなど、上司命令で改ざんを行い、自殺した近畿財務局職員・赤木俊夫さんの死が「近財職員は(立憲民主党参院議員の)杉尾秀哉や小西洋之が1時間吊るし上げた翌日に自殺」と虚偽を投稿し、評価を下げた。実際には両氏が赤木さんに説明を求めたとか、面会したとの事実はない。
小西議員らが名誉棄損での損害賠償請求を起こすために東京地裁に「発信者情報開示請求」を申し立て、企業名が判明したことから事実があきらかになってきた。
立憲民主党の森ゆうこ参院議員は14日の参院本会議代表質問で「小西参院議員が提訴のために行った『発信者情報開示請求手続』で「国会質疑の動画を編集し、本来の意図と全く違う内容のフェイクニュースを作り上げ、拡散、攻撃してきたツイッターアカウントの運営者が『法人』であることがわかった」と指摘。「BuzzFeed Newsの調査によれば法人は自民党議員や自民党支部と取引がある。総選挙では、金を使ってネット工作を行い、選挙の結果を不当に歪めるような卑劣な行為を自民党の議員に行わせない、と、この場で約束いただけないか」と要請。岸田総理は質問に正面から答えず「選挙運動や政治活動については公職選挙法などに定めがある。わが党(自民党)の議員に限らず、それぞれの議員や候補者がそれらのルールに従って発信し、選挙運動を行い、政治活動を行うべきであるということは当然であると考える」などとすり替えた。
ところが今月24日号のしんぶん「赤旗」は政権批判野党やメディアをウソ情報で攻撃する投稿をしていたツイッターの匿名アカウント「Dappi」の運営をしていた法人の社長が「自民党本部の事務方トップ・事務総長の親戚を名乗り、自民党本部や国会などに出入りしていた」と報じた。一般論の国会答弁ですむ話ではない。
「政党が意図的に世論誘導していたとすれば民主主義破壊の重大問題」(赤旗)であり、自民党の甘利明幹事長が「民主主義か、共産主義かの選択」などとしているが、その民主主義を壊す行為を自民党事務方の親戚が行っていたとすれば、重大問題だ。
赤旗は自民党関係者が「その社長とは会ったことがある。『元宿さんの親戚』と紹介され、本人もそう名乗り、名刺交換もした。本部や(自民)都連を闊歩していた」との証言を掲載している。元宿氏は自民党本部事務方トップ(事務総長)の元宿仁氏のこと。安倍第2次政権の13年以降で自民都連から、この法人に725万円が支払われているとしている。
特に赤旗記事で注目なのは、この法人社長が17年に、りそな銀行衆議院支店で住宅ローンを組んだという内容だ。衆議院支店の説明を紹介しているが、支店説明では「当支店は議員会館に勤めている方の福利厚生施設。一般の方は入れず、国会通行証を持ち、お勤めの方のみ、利用や口座開設が可能」なのだという。法人社長は自民党本部の元宿氏の親戚なのか、また衆議院支店でなぜ、住宅ローン契約ができたのか。自民党総裁として、岸田総裁には迅速に記者会見で事実関係を確認して説明すべき。
「Dappi」への政治関与問題、自民党との関係、「国民の声が政治に届くよう」、岸田総理は特技の「人の話をよく聞く」その耳で、今週中にも事実関係を記者会見で明らかにすべき。(編集担当:森高龍二)