現在の「日本の空気感」は、コロナ禍とウクライナ侵攻で「緊張」感が急激に高まっているようだ。野村総研(野村総合研究所)が日本社会の空気感の変化をSNS情報から読み取る指標「日本の空気感指数」を開発、2015年1月からこの指標の変化を計測した結果レポートを3月3日に公表している。
この指標は日本の人々がどのような感情状態にあるのかSNSへの書き込み情報をもとに「活気」「混乱」「落込み」「怒り」「緊張」「疲れ」という6つの指標で計測し日本社会の「空気感」の変動を定量的に把握しようと言うものだ。野村総研ではこの指標を「日本の空気感指数」と名付け、これを継続的に計測することで、その時々の「空気感」を客観的に把握し、将来の政策検討、経済予測、マーケティング戦略などへも活用することを目指すとしている。指標は筑波大学システム情報系の佐野幸恵助教との共同研究成果がベースになっているとのことだ。
6つの指標については、心理検査(POMS)の考え方をもとに設定され、「活気」は「元気、活発、陽気、精力的、積極的、イキイキなど」、「混乱」は「混乱、錯乱、当惑、自信がない、唖然、ゴタゴタなど」、「落込み」は「悲しみ、憂うつ、孤独、怯え、ガッカリなど」、「怒り」は「怒る、困る、反抗、不機嫌、イライラなど」、「緊張」は「緊張、心配、不安、落ち着かない、ソワソワなど」、「疲れ」は「疲れた、くたびれた、だるい、うんざり、ヘトヘトなど」の感情表現が定量化されたものだ。
総研が15年から21年までのTwitterユーザーの投稿データをもとに各指標に関連する単語などの書き込み量を計測し指数化した結果では、例えば地震や台風などの自然災害で「緊張」指標が拡大したり、円安などの経済的な要因が「混乱」や「緊張」指標が変動したりしている。20年以降のコロナ禍では「緊張」が高まっており、緊急事態宣言解除のタイミングでは「活気」の指標が高まっている。また最近では、ウクライナ侵攻のあった2月24日には「混乱」「落込み」「緊張」の指標が大幅な高まりを見せている。総研は「1日単位の変動を見ることで、日本の空気感の短期的な変化についても高感度に観測することができる」としている。一方、「怒り」や「疲れ」の指標は小幅な変動はあるものの長期的には安定的だ。総研では学術研究、政策検討、マーケティング戦略立案などに役立つよう、今後も定期的に測定結果について公表していくとしている。(編集担当:久保田雄城)