【コラム】石炭禁輸制裁の実効に加え、サハリン2も視野に

2022年04月09日 08:20

EN-a_009

岸田総理はウクライナ情勢を踏まえて国民生活安定のために「原油価格、原材料価格、食材価格などへの波及状況を注視し、事態が長引く場合には機動的に対応していく」としている

 ロシアによるウクライナ侵略により、ウクライナ南東部・マリウポリのボイチェンコ市長は子ども210人を含む一般市民5000人がこれまでに死亡と発表したと報じられている。劇場や病院なども無差別攻撃されている状況。

 侵略先のキーウ(キエフ)近郊のブチャでは子どもが後ろ手に縛られたまま頭を銃撃された。女性が避難先で性的暴行を受けるなど、人権蹂躙の許されない行為が証言されている。国際人権法違反、戦争犯罪を決して許してはならないし、世界が連携して早期に停止させる状況にしなければならない。

 国連総会・緊急特別会合はウクライナ侵略に対し、国連人権理事会でのロシアの理事国の資格を停止する決議を93か国の賛同で採決した。

 ロシアの侵略に対し、世界が抗議、制裁することで『終戦』への道筋をつくるほかに、現況では手だてがないようだ。それには金融制裁のみでなく、実効性のある「エネルギー資源」への切り込みが、痛みの伴うものであるが、G7各国足並みそろえて実行する必要がある。

 EUはロシアの非人道的行為に対し、ロシア産石炭の輸入禁止を検討。日本も8日夕、岸田文雄総理が記者会見し「ロシアからの石炭輸入を禁止する」と発表した。

 ただ岸田総理は「ロシア産の石炭は電力のみならずセメントや鉄鋼など様々な分野で使用されている。その実態を踏まえて、それぞれにおいて代替策を見つけながら『ロシアからの輸入禁止を実現する』流れを考えている」と実施までの期限は指定できなかった。

 岸田総理は輸入禁止まで「それがどれくらいの期間かかるのかは一律に答えるのは控えたい。それぞれの分野、業界において適切な対応(代替策)をし、最終的に『禁輸』に持っていきたい」と記者団に答え、段階的な取り組みにならざるを得ないとの思いをにじませた。ただ「エネルギー資源」への切り込み自体は勇断であり、評価したい。

 ロシアからの日本の石炭輸入割合は17%(2020年)。代替確保には石炭価格上昇が否めないが、ロシア軍による残虐行為を許さない毅然とした態度を日本政府として示すにはEUと歩調を合わせるほかない。

 またロシアからの石炭輸入を禁止すれば電気料金はさらに上がるだろう。上がっても、国民も、納得していくのではないか。「ウクライナの人々とともにある」日本国民だ。

 岸田総理はウクライナ情勢を踏まえて国民生活安定のために「原油価格、原材料価格、食材価格などへの波及状況を注視し、事態が長引く場合には機動的に対応していく」としている。

 5日の原油価格・物価高騰等に関する関係閣僚会議では「政府として、直面する危機に緊急かつ機動的に対応するべく、与党とも十分連携しながら、効果をしっかりと発揮できる対策を4月中に取りまとめる」考えだ。「トリガー条項」凍結解除の英断も早くしてほしい。

 自民党外交部会長の佐藤正久参院議員は「日本が殺傷兵器をウクライナへ供与できない以上、強い経済制裁を日米欧で行うことが大事。日本は覚悟を問われている」と7日の党部会で提起した。ロシアの姿勢いかんによって「サハリン2」も視野に、より一段のエネルギー資源対応も検討すべきなのだろう。今はロシアの残虐行為、侵略行為を止めるため、岸田総理の先を見通す力と勇断に期待したい。(編集担当:森高龍二)