22年度「産業機械受注」、ロシア制裁で下振れ要因も経済再開で内・外需計プラスの見込み

2022年03月27日 09:35

画・22年度「産業機械受注」、ロシア制裁で下振れ要因も経済再開で内・外需計プラスの見込み。

日本産業機械工業会が「2022年度の産業機械の受注見通し」。経済制裁等によりロシアで契約を見込んでいた案件の消滅など下振れ要因もあるが、欧州のLNG案件等の増加などで内・外需計5.7%増。

 ワクチン接種普及や変異株の弱毒化で欧米を中心に経済正常化が推し進められており世界的に景気回復傾向となっている。一方で経済活動の再開それ自体が原油高や半導体不足などの失速要因を生んでいる上に、2月下旬からのロシアによるウクライナ侵攻で更なるエネルギーや穀物価格の上昇によって世界経済の行く先は不透明になりつつある。日本の景況は3月23日発表の景気動向指数(1月分)において一致指数、先行指数ともにマイナスに反転し急激な減速感が見られる。こうした状況で世界経済が先行き不透明感を増す中でも、長期的な経済活動の傾向を示す産業機械の2022年度の受注状況の見通しは堅調なものとなっている。

 23日に発表された日本産業機械工業会の「2022年度の産業機械の受注見通し」によれば、ウクライナ情勢による下振れ要因が懸念されるものの、22年度の受注見通しは内・外需計で前年度比5.7%のプラスの5兆4412億円と見込まれている。内訳は内需が同0.8%、外需が同14.9%のプラスで、外需が2桁成長と市場を牽引する模様だ。

 下振れ要因としては「(1)経済制裁等によりロシアで契約を見込んでいた案件の消滅。(2)物流や金融の混乱に伴う出荷停止または受注キャンセルもしくは代金回収困難、産業機械の据え付け・補修・メンテナンス等の部品や人員手配困難。(3)ロシア等事業に対するレピュテーションリスク回避に伴う受注機会の消滅、エンドユーザが未確認である汎用機の受注見合わせ、ロシアでプラントを建設する欧州や中国EPCからのコンポーネント発注停止、産業機械と共に使用される欧州の電気機械等の輸出停止による受注消滅。(4)国内・海外の産業機械ユーザの生産計画の見直しによる設備投資の縮小等」があげられている。一方で、上振れ要因としては「欧州のLNG案件やパイプライン関連の需要の増加や、天然ガス開発で既に計画されているプロジェクトの投資判断が早まり前倒し発注されるケース等、エネルギー分野での受注の増加の可能性」があげられている。

 コロナ関連での再稼働に伴う半導体不足やサプライチェーンの混乱で、輸送用機械を中心に正常化のめどは立っていない。工業会は今のところ外需主導のプラス成長を見通しているが、この見通しは「1月下旬~2月中旬に実施した調査をもとに策定したもの」であるため「ロシアに対する経済制裁やサプライチェーンの混乱等の不確定要素の影響を織り込んでいない」。先行き不透明感が増す中、今後の動向に注視が必要なようだ。(編集担当:久保田雄城)