大手自動車関連部品メーカーのデンソーは、同社初となるSiC(シリコンカーバイド)パワー半導体を用いたインバーターを開発した。この製品は高効率なインバーターで、電気自動車(EV)の電力損失を大幅に低減する大きな特徴を持つ。インバーターには、BluE Nexus社の電動駆動モジュール「eAxle」に組み込まれ、3月に発売開始されたLEXUS初の電気自動車(BEV)専用モデル、新型「RZ」に搭載された。
今回搭載されているSiCパワー半導体は、シリコン(Si)と炭素(C)で構成され、電力損失を大幅に低減する半導体の材料でつくられている。デンソー独自のトレンチMOS構造を採用したSiCパワー半導体により、高耐圧と低オン抵抗──電流の流れやすさを示す指標。値が小さいほど電力損失が少ないことを示す──を両立し、発熱による電力損失を低減することで1チップあたりの出力を向上。BEVの動力源となるモーターを駆動・制御する役割を持つインバーターの駆動素子にSiCパワー半導体を採用することにより、従来のSiパワー半導体を用いたインバーターと比べて、特定の走行条件において電力損失を半減以下にした。この結果、EVの電費が向上、航続距離の延伸に貢献する。
新開発のSiCパワー半導体は、デンソーと豊田中央研究所との共同開発による高品質化技術をもとに、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)委託業務による成果を取り込んだSiCエピタキシャルウェハーを活用することで、結晶の原子配列の乱れにより素子が正常に作動しなくなる結晶欠陥の半減。車載品質を確保し、安定的なSiC素子生産を実現した。
デンソーはこれまでも、同社のSiC技術を「REVOSIC(レボシック)」と名付け、ウェハーから素子、パワーカードなどのモジュールに至る総合的な技術開発に取り組んできた。
今後は2022年に採択されたグリーンイノベーション基金(GI基金)、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に造成された基金。当社は次世代パワー半導体デバイス製造技術開発(電動車向け)プロジェクトの助成も活用しながら、車両のより効率的なエネルギーマネジメントを目指した開発を通して、カーボンニュートラルな社会の実現に貢献する。(編集担当:吉田恒)