2022年12月の内閣府月例経済報告は「景気は、緩やかに持ち直している」となっている。一方で、世界的な物価高騰の中、各国は金融引き締め策を講じており、「海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている」とも指摘している。OECDは11月、23年の世界経済について「リセッションではないが顕著な低迷局面を見込む」と表明しており、欧米中の景気減速を予測している。
世界的な物価高騰の背景には、ウイズコロナ下でコトの消費からモノの消費に世界が一斉にシフトしたため、資源需給のミスマッチと供給網の混乱があると指摘されている。世界各国は利上げでインフレを抑え込もうとしており、米国では既に金利上昇に伴う住宅投資の減速が見られる。こうした供給網混乱、原材料不足、生産の滞り、住宅投資の減速などにより、経済の川上に位置し景気動向を占う鉄鋼生産の減速が続いており、日本の鉄鋼外需は海外経済の減速を受け23年も前年割れとなる見込みだ。
12月22日、日本鉄鋼連盟が11月の鉄鋼生産概況を発表しているが、11月の粗鋼生産は718万トンで、前月比では2.2%の減少、前年同月比は10.7%の減少で、11カ月連続の減少となっている。銑鉄生産は510.5万トン、前月比で1.9%減、前年同月比では10.4%減となり、やはり11カ月連続の減少だ。2022年1月~11月の累計においても粗鋼生産が前年同期の93.1%、銑鉄生産も同91.7%と前年割れとなっている。
21日に発表された同連盟の「2023年度の鉄鋼需要見通し」を見ると、22年度の内需については、設備投資が回復している一方で、資材費高騰などにより建設工事の遅れや半導体不足による自動車生産の低迷、造船部門のスローダウン等の影響を受け全体として前年割れが見込まれている。外需についても、ASEANを始め主要向け先で需要が減少しており前年割れが見込まれている。23年度の内需については、建設業の土木部門では国土強靱化政策による需要増、建築部門では首都圏を中心に大型案件が堅調に推移することなどから需要増加の見通し、製造業では自動車の回復は見込めないものの、建機需要が堅調なため増加予測、造船は引き続き低迷するものの、全体としては底堅く推移するとの見通しだ。一方、外需については「海外経済の減速から前年割れ」の見通しとなっている。内外需を合わせた粗鋼生産は前年度比微増と見込まれている。
内需はまだら模様なものの底堅く推移すると見込まれるが、外需は世界経済減速で縮小が予測され、これがどの程度国内景気に影響するかが注目される。(編集担当:久保田雄城)