日本の自給率がほぼ100%である数少ない製品である飲料用牛乳。しかしここ数年はその生産量が減少の一途を辿っており、農林水産省のデータを見ても、10年以上にわたって前年比増となった年はない。こうした状況を受けて森永乳業は、大幅な生産体制の見直しを発表した。
まず、森永乳業<2264>のグループ会社である森永北陸乳業が、今年9月末をもって福井工場における牛乳、乳飲料等の市乳製品の生産を中止すると発表。生産中止後は、工場設備を改造したうえで、新たにビフィズス菌末の生産拠点として活用する予定だという。
また、同じく森永乳業のグループ会社である清水乳業は、今年10月末をもって生産を中止すると発表。東海、首都圏エリアを中心に牛乳、乳飲料、乳酸菌飲料、ヨーグルト、清涼飲料の生産拠点として活動を行なっていたものの、生産拠点統廃合の一環として同社およびグループ会社に生産を移管し、平成26年3月末をもって解散するという。
森永乳業の平成25年3月期第3四半期連結決算では、売上高が前年同期比2.2%増となっているものの、ヨーグルトやプリン等が前年を上回ったが故であり、牛乳類は前年割れとなっている。日本全体での生産量・消費量が減少している以上、こうした動きは他の企業にも広がるであろう。また前出農林水産省のデータによると、近時比較的好調な乳酸菌に関しても、飲料用途は減少の一途を辿っており、市場が縮小している。自給率がほぼ100%であるだけに、その市場縮小は国内の酪農家を直撃する問題である。人口が減少に転じ内需が縮小する傾向にあるとはいえ、そうした中で国内の酪農業をいかにして守っていくのか、今の内に考える必要があるであろう。(編集担当:井畑学)