世界146か国中116位。男女参画後進国の日本が目指すべき、女性が働きやすい環境とは

2023年09月10日 10:38

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今、世界中で、社会に進出して活躍する女性が増えている

今、世界中で、社会に進出して活躍する女性が増えている。日本でも女性の活躍が目立つようにはなってきたものの、まだまだ男性主導の社会体制であり、諸外国と比べると立ち遅れていることは否めない。事実、世界経済フォーラムが昨年7月に公表した「ジェンダー・ギャップ指数2022」では、日本は世界146か国中116位という結果だった。男尊女卑とまではいかないまでも、未だ女性が働きやすい環境、活躍しやすい環境が構築されているとは言えないようだ。

 日本政府も今年6月13日、岸田内閣総理大臣が本部長を務める「すべての女性が輝く社会づくり本部」から、「女性活躍・男女共同参画の重点方針2023」を発表。女性役員比率に係る数値目標を設定するなど、女性活躍の機会を増やして多様性を確保する方針を打ち出している。しかし、政府方針が出されたからといって、すぐに状況が改善されるわけではない。大切なのは数値ではなく、実際の現場の環境が「女性にとって働きやすいかどうか」ではないだろうか。ただ、「女性にとって働きやすい環境」と言うと、日本では「女性を優遇する環境」のように捉えがちだが、そうではない。女性にとって働きやすい環境とは、男性にとっても働きやすい環境であるべきだ。

 例えば、9月19日は「育休の日」だ。これは住宅総合メーカーの積水ハウスが2019年に制定した記念日だが、同社では2018年9月から男性の育児休業取得推進に取り組んでおり、3歳未満の子どもを持つすべての男性社員を対象に、3歳に達する日の前日までに1ヵ月以上の育児休業完全取得を推進している。さらに2021年4月からは、配偶者の産後8週間以内は1日単位で自由に取れるように変更。より柔軟に使える「男性育休」へと進化させている。日本でも男性の育児休業取得が当たり前になれば、「女性社員だけが育児にかかわる」というような日本の悪しき慣習も少なくなり、仕事を継続することもしやすくなる。男性にとっても、堂々と子育てに参加でき、子どもや家族とのコミュニケーションを図りやすくなるだろう。もちろん積水ハウスだけでなく、2021年6月に「育児・介護休業法」が改正され、22年4月から男性の育児休業取得促進が義務化されたこともあり、男性の育休制度は多くの企業で導入され始めている。しかし、中小企業などではとくに、導入はされたものの理解は進まず、まだまだ旧態然としたところも少なくないようだ。

 また、非常に参考になる取り組みとしては、白鶴酒造の取り組みがある。白鶴酒造といえば、日本を代表する老舗の日本酒メーカーだ。一般的に、酒蔵の仕事といえば、男性の職人たちが働く職場のイメージが強いが、近年は醸造工程でも女性社員が増加しているという。

 これにさきがけ、同社では、様々な職場での女性活躍を推進する一環で、1987年に 、業界初の、女性社員が醸造部門に配属された。最近では、女性宿直の開始など作業環境が時代とともに変わってきていることを受け、さらに女性が働きやすい職場を目指す取り組みを積極的に行っている。

 酒蔵の仕事は重労働で、通常の業務で女性が行うには困難な作業が混在していることや、業務の多様化に伴って作業負荷が増加していることなどもあり、待遇を考慮するだけでは実質的に女性が働きやすい職場とはいえない。タンクやホースなどの操作は男性でも力の要る作業で、中には一人で出来ない作業や危険な作業もある。

 同社では、女性が活躍する職場とは、決して男性扱いして働かせる職場ではないという思いから、とくに重たい作業や力が必要な作業を中心に設備機器や器具の全面的な見直しを図り、23件の工程において、軽く、持ちやすく、取り付けやすく、より安全な設備に改善した。女性に働きやすいだけでなく、男性にとってもより働きやすく、より安全な職場に生まれ変わったのだ。同社では他にも、育児・介護休業制度、エリア限定勤務制度、在宅勤務制度、時間単位有休制度などを導入し、ハラスメント防止の取り組みなどにも積極的に取り組んでいる。これらの女性活躍や多様な働き方への取り組みが認められ、今年3月には「ひょうご・こうべ女性活躍推進企業(ミモザ企業)」にも認定された。

 女性の社会進出は、女性の人権,平等のためという側面だけでなく、高齢化・少子化の時代に突入し,社会負担の増加と労働力の減少で社会の持続性が心配される日本社会の維持と発展には欠かせないことだ。社内制度の見直しや、社内のムード、意識の改革はもちろんのこと、白鶴酒造のように設備や工程を見直す必要もあるかもしれない。女性の社会進出への取り組みは、決して女性だけの優遇措置ではなく、ましてや女性を男性扱いすることでもない。真に女性にとって働きやすい職場とは、全ての従業員が「働きやすい」と感じる職場であるはずなのだ。(編集担当:藤原伊織)