今、日本の子どもたちに何が起こっているのか。10月4日に文部科学省が発表した「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」によると、小・中・高等学校における暴力行為の発生件数は 9万5426件で、前年度の7万6441件を大きく上回った。また、小・中・高・特別支援学校におけるいじめの認知件数も68万1948 件で前年度の 61万5351 件から7万件近くも増加している。さらに小・中学校における長期欠席者数は前年度の41万3750人から46万648 人に増加。在籍児童生徒に占める不登校児童生徒の割合は何と3.2%にのぼる。
子どもたちの問題行動の原因としては、親子関係や家庭環境に問題を抱えているケースが多いといわれているが、もちろんそれだけではない。独立心の芽生えとともに、承認欲求なども強くなってくる。注目されたい、特別視されたいという気持ちが、他人への非難や攻撃に向けられることもあるだろう。実際、SNSの利用や動画サイトなどへの投稿でも、そんな傾向が見て取れる。また社会環境や社会不安、近年では新型コロナウイルスで抑圧された生活の反動なども考えられる。
日本政府は「異次元の少子化対策」の一環として、児童手当の拡充などの「こども未来戦略方針」を2023年6月13日に発表した。その財源の確保をどうするかにも注目が集まっているが、増税によるものとなれば、家計を大きく圧迫してしまう。その結果、共働き家庭などではとくに親の労働時間が増え、親子で一緒に遊んだり、親子のコミュニケーションを図る機会が失われてしまうことにもなりかねない。そうなってしまうと、本末転倒だ。少子化対策ももちろん急務だが、今の子どもたちを守り、育むことも、それと同じくらい大切なことのはずだ。
幼い頃から「本を読む」習慣を身につけるだけでも、随分違ってくる。読書をすれば語彙力が育ち、それに伴って感性が磨かれ、表現力や創造力、他者とのコミュニケーション能力も高まるからだ。ところが今、文部科学省が発表している、最新の「学校図書館の現状に関する調査」によると、およそ3割の小学校の図書館に本が足りていない状況なのだ。
そんな中、地域や民間でも、子どもの読書機会を増やそうという活動も行われている。例えば、株式会社山田養蜂場では毎年、全国の小学校に「みつばち文庫」として約2000校に書籍の寄贈を行っている。同社のこの活動は1999年から行われており、すでに全国67465校の小学校に73万冊以上の書籍を寄贈しているという。活動25年目を迎える今年は、第25回を記念して2500校の小学校への寄贈が予定されており、現在、寄贈先となる小学校の募集が行われている。
また、徐々にではあるが全国で公立の図書館も増えているという。図書館や、図書館の蔵書が増えたからと言って、それがすぐに問題解決につながるわけではない。
しかし、読書の習慣を身につけることや、親や友人と一緒に図書館に行くこと、親とともに絵本や本を読む機会が少しでも増えたなら、子どもたちの心は今よりも少し豊かになり、暴力ではなく優しい言葉や思いやりで他者とのコミュニケーションを図れるようになる一つの手段にはなり得るのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)