日本の産業が競争力を喪失した要因の一つに日本の人事・労務慣行の特殊性が挙げられる。この家族主義的な日本の労務慣行は労使の団結力を生み製造業中心の社会では上手く機能し、競争優位性を持っていたかも知れない。しかし、この慣行は日本人のみに通用するものであり、現代のグローバル化した情報社会のプラットフォームにはそぐわないと指摘され続けてきた。集団主義的な労務管理からよりグローバルに通用する個人を尊重した労務管理が求められている。日本の労務管理の問題点としては公私混同したような業務遂行などが挙げられ、サービス残業などのように契約に基づかず違法性の高い労働の強要などがある。このような日本的な労務慣行は未だ多くの企業に残っており、従業員のみでなく内定学生に対しても不適切な対応が行われているようだ。
連合(日本労働組合総連合会)の実施した調査によれば、未だ雇用関係の成立していない内定段階の学生に対し、様々なハラスメントの他、アルバイトや研修への参加を強く要求するなど、強要と受け取られかねないケースも少なくないようだ。4月28日、連合が全国の入社2~5年目の男女1000名を対象にして行った「入社前後のトラブルに関する調査2022」(実施期間:2月28日~3月2日)の集計結果を公表している。これによれば、就職活動中に「他の応募企業の選考状況を聞かれた」者の割合は50.0%、また「他に応募している企業名を聞かれた」は43.5%となっている。「内定時に、その企業に就職するという誓約書の提出を求められた」者が9.3%、「内定後、他社の辞退を求められた」5.8%とオワハラ(就活終われハラスメント)を受けた者も少数であるが存在する。
内定後、就職する前に要求されたものでは、「資格取得の勉強・通信教育」が24.6%、「内定者インターンシップやアルバイト」が24.1%、「研修に参加」が18.8%、「読書感想文やレポートなどの課題を提出」が12.9%、「次の学年の採用選考の手伝い」が3.3%などとなっており、「内定者インターンシップやアルバイト」は16年調査より6.9ポイントも増加している。しかし、「必ず参加、または参加を強く求められた」者は46.9%で16年調査より6.6ポイント減少しており、露骨な強要は減少傾向のようだが、実質強制という者も少なからず見られるようだ。人手不足の中、企業側が人材確保のために不適切な対応をとるケースは増加しているのかも知れない。(編集担当:久保田雄城)