我が国の「活字離れ」は急速に進んでいるようだ。日本新聞協会の調べによると、2022年10月時点での一般紙総発行部数が、2869万4915部だった。前年に比べて約196万部の減少。10年前の3分の2以下だそうだ。ネットメディアの台頭やペーパレス社会の影響もあるが、活字離れを物語る数字だろう。この活字離れは、大人だけの話ではない。
全国学校図書館協議会の「学校図書館調査」にて、2021年度・全国小中学校1校あたりの図書購入費が、9年前の2012年度に比べて7万~10万円減少し、平均図書購入冊数が100冊程度、少なくなっていることが明らかになった。政府は1993年から「学校図書館図書整備等5ヵ年計画」を実施し、現在第6次まで進めているが、計画的な整備が十分に進んでいない現状が明らかになった。
子どもの「読書離れ」はより深刻とも言える。自宅のネット環境の拡充に伴い、文字を読むよりも動画を見る子どもが増えている。確かに情報として耳には入ってくるが、理解する力や読解する力、語彙力の低下が懸念される。読む・読まないに関わらず、読める環境を整えておくことが重要だ。政府や自治体の環境作りに加えて、個人で学校図書に寄贈される方も増えている。さらに国内企業の中にも、学校図書に取り組む企業が増えてきている。
国内大手ミツバチ産品メーカーである株式会社山田養蜂場では、毎年全国の小学校に、「みつばち文庫」として書籍の寄贈を行なっている。子供たちに読書を通じて豊かな心を育んで欲しいとの願いを込めて、「自然環境の大切さ」、「人と人とのつながり」、「命の大切さ」をテーマとした書籍を選定し、1999年から寄贈している。その数は「全国65,482校の小学校に71万冊以上」と、計り知れない貢献度だ。低学年から高学年まで楽しめるよう、絵本と読み物のバランス、ジャンルに偏りがないかを考慮して選書しており、寄贈先の小学校からも好評だそうだ。
挙式・披露宴などをプロデュースするアイ・ケイ・ケイホールディングス株式会社では、茨城県全ての県立高等学校及び中等教育学校に、歴史上の人物の伝記、企業経営者の随想集などを10冊ずつ寄贈した。小学校よりも社会に出ることを具体的にイメージし始める中高生をターゲットに、たくさんの言葉や考え方が記載された書籍を手に取ることで、これからの時代を担う「人財」になるヒントにして欲しいというメッセージが込められている。
本や紙面を離れたとて、「文字」というのは付いて回る。「文字」はそれ単体が重要なのではない。文字をツールとして活かして、人と人とがコミュニケーションを取ることが重要なのだ。円滑なコミュニケーションを取るために、相手の言葉を受け取る理解力、自分の考えを的確に伝える語彙力、問題点を見定める読解力が必要になる。そうした能力の成長に、読書は非常に有効なのだ。「字」を「活」かしてこそ活字になる。離れないよう心掛けたい。(編集担当:今井慎太郎)