今や、生活必需品となったスマートフォンやタブレット型ウェアラブル端末。内閣府の消費動向調査によると、2023年時点での日本国内の総世帯における世帯ベースのスマートフォン普及率は約90%で、タブレット型端末も4割近くの家庭に普及していることが分かった。
成熟した市場の中で台数ベースでの大幅な成長が期待できない以上、操作性や端末デザイン、カメラ機能などに工夫を凝らして差別化していく方向で、1台当たりの利益の引き上げや、買い替え需要を見込むが、それらもすでに多くの消費者の要求水準に達しているのが現状だ。
一方で、独特の形状やデザインを持つスマホへの関心も高まっている。サムスンのGalaxyシリーズやモトローラのrazr 5Gなど、折りたためるスマホや、ディスプレイが4.7インチのiPhone SEをはじめ、ディスプレイサイズがわずか3インチという、衝撃の小ささを実現したユニハーツ社の Jelly 2など、小型スマホを選択する人も多い。大画面を求める人もいれば、片手で操作できるサイズを求める人もいる。今後はより細分化していく顧客のニーズにどこまで対応できるかの勝負になりそうだ。
とはいえ、画面サイズの大小にかかわらず、顧客が望む機能が変わることはない。操作性、バッテリーの容量や寿命、カメラ機能、薄さや軽さ、その他もろもろ。その上、ネックとなるのがスマホのボディにはスペースが限られているということだ。今や、スマホ一つで通話やメールはもちろん、写真や動画の撮影、インターネットから決済サービスの利用までできる時代。その便利さに慣れてしまうと、もう逃れられない。機種変更して、そんな機能の一つでも使えなくなったり、使い勝手が悪くなったりすれば「〇〇社のスマホはダメだ」と途端に低評価を下されることにもなりかねない。それは超小型のスマホでも、超薄型のスマホでも同様だ。
限られた搭載スペースの中に、いかに機能を詰め込むか。その答えの一つが電子部品の超小型化だ。スマホの薄型・高性能化は、より小型で高密度実装が可能なデバイスを求めている。それはウェアラブル端末でも同様だ。
そんな中、スマートフォンやウェアラブル端末などで採用が進んでいるのがシリコンキャパシタだ。薄膜半導体技術を用いたシリコンキャパシタは、従来の積層セラミックコンデンサ(MLCC)と比べて薄型で高い静電容量を持つことが特長となっている。安定した温度特性を備えており信頼性にも優れることから、スマートフォンやウェアラブル端末などのアプリケーションへの採用が加速している。シリコンキャパシタ市場の拡大を予測して、半導体メーカーも動き始めた。
アナログ半導体とパワーデバイスを武器にグローバルに展開するロームも、その一つだ。同社は、今年9月にシリコンキャパシタ市場への参入を発表した。同社初のシリコンキャパシタは、長年培ったシリコン半導体の加工技術を生かし、面実装タイプの量産品で業界最小の0.4mm×0.2mmサイズを実現。1µm単位での加工を可能にする独自の微細化技術RASMID™工法により、外観形成時の欠けを無くし、寸法公差を±10µm以内にしたという。一般的なシリコンキャパシタと比べて、製品面積で約55%、通信回路における実装面積で約21%もの省スペース化を可能にしただけでなく、実装強度も約8%増となっており、小型化しても一般品に負けない強度を保っている。同社では、シリコンキャパシタの第2弾シリーズとして、サーバーなど産業分野における高速・大容量通信機器など向けに最適な、高周波特性に優れた製品の開発も予定しているというから、今後のシリコンキャパシタ市場で台風の目になりそうだ。
スマートフォン市場は現在、停滞しているといわれているが、搭載スペースに余裕が生まれれば、またそこに革新的な技術やデザインが投入され、飽和状態の市場にも大きなスペースができるのではないだろうか。そして、その先頭に立って市場を牽引しているのが、日本のものづくり企業であることを期待したい。(編集担当:藤原伊織)