憲法が保障する「学問の自由」や「大学の自治」が侵害される危険があるとして反対や懸念の声が相次ぐ中、東大、京大、阪大など事業規模の大きい国立大学を「特定国立大学法人」に指定し中期目標・中期計画、予算・決算に関する運営方針を決定する「運営方針会議」の設置を規定し、同会議委員の任命に文部科学大臣の承認を必要とするなどとする『国立大学法人法改正案』が21日、自民・公明与党と維新、国民民主などの賛成多数で衆院で可決された。立憲・共産・れいわなどが反対したが、衆院の通過で審議の場は参院に移った。国会の外では反対や懸念の声が日増しに増えている。
20日の衆院本会議で立憲民主党の牧義夫議員は「政府・文部科学省が『稼げる大学』を目指すあまり、大学の自治と学問の自由が奪われかねない、大変危機的状況が生まれている」と指摘。
牧議員は「改正案が通ってしまうと文部科学大臣による運営方針委員の承認拒否など『第2の日本学術会議問題』が起こると危惧されている」とも提起した。
手続きについても審議が十分でなく拙速すぎると指摘した。牧議員は「14日の文部科学委員会での参考人質疑では4人の大学関係の参考人全員が改正案の内容を知ったのはつい最近と答弁した。大学関係者の驚き、怒りが急速に高まっている。関係者の協力が得られない中では制度ができてからもうまく運用されるわけがない。中央教育審議会などの議論を経て、時間をかけて丁寧に議論すべきだったと悔やまれてならない」と時間をかけて審議すべき事案であることでも、拙速なやり方に反対した。
日本共産党の宮本岳志議員も「大学の人事に文部科学大臣が介入する余地を与える。制度的に大学の自治を掘り崩し、学問の自由を侵害するもので看過できない」と強く反対の討論を行った。
盛山正仁文部科学大臣はこれまでの国会答弁で「運営方針会議を設置する国立大学法人については学長の決定権限の一部を運営方針会議に移譲するため、文部科学大臣が学長を任命する現行の趣旨を勘案し、法律上、主務大臣の関与として文部科学大臣が承認するという手続きをとることとしている。承認にあたっては大学の自主性自律性に鑑み、申し出に明白な形式的違反性や違法性がある場合、明らかに不適切と客観的に認められる場合を除き、拒否することはできないものとし、文部科学大臣の学長任命にならい、承認は国立大学法人の申し出に基づいて行うものとすることを規定することで、大学の自治への介入とはならない制度にしている」との説明を繰り返すばかり。第2の日本学術会議問題が起こらないよう担保されているとはいえそうにない。(編集担当:森高龍二)