「国立大学法人法改正案」が衆議院文部科学委員会で現在、審議されているが、改正案は「学問の自由」「大学の自治」の根本にかかわる重大な懸念があると廃案を求める声が相次いでいる。
法案では理事が7人以上の国立大学法人のうち特に事業規模の大きい「特定国立大学法人」においては、学長と法人外部人材参入も想定し、3人以上の運営方針委員で構成する「運営方針会議」を義務付けている。
この会議は大学の中期目標や中期計画、予算・決算などを決議・決定する。また運営方針会議の委員は学長選考・監察会議との協議を経て、文部科学大臣の承認を得たうえで、学長が任命することなどと定めている。
15日の審議では立憲民主党の柚木道義委員が「文部科学大臣の承認はあくまで形式的なもの、との理解でよいか」と質した。
盛山正仁文部科学大臣は「国立大学法人の方で検討され、文部科学大臣に承認を求めてこられる。それを、私たちが恣意的に判断するものではない。どうみても不適切であると、客観的な基準に合致しないようなこと以外に承認を拒否するというようなことは一切考えていない」と強調した。
これに対し柚木議員は「日本学術会議では、そうした中でも任命拒否問題があり、今も任命拒否の説明も『人事のことだから』と拒否している。『形式的なもの』との総理答弁が、学術会議での任命拒否では破られてきた。まったく担保されていない。『文部科学大臣の承認を得たうえで』という部分は削除するべきだ」と疑念、懸念を払しょくするためには削除が必要と要求した。
盛山大臣は「日本学術会議は行政機関であることから国立大学法人とは性格が異なる。総理やそれぞれの大臣の任命に関する考え方も異なることを理解いただきたい」と比較対象にできないとした。
そのうえで「現行の国立大学法人制度においては、学長が法人運営に関するすべての事項を決定する権限を有している。主務大臣である文部科学大臣が国立大学法人の申し出に基づいて学長を任命することになっている。運営方針会議を設置する国立大学法人については学長の決定権限の一部を運営方針会議に移譲することから文部科学大臣が学長を任命する現行制度上の趣旨を勘案し、法律上、主務大臣の関与として文部科学大臣が承認するというものであり、明らかに不適切、違法性が高いという場合以外に、我々として恣意的な運用をするつもりはないと明言している」と理解を求めた。
また「運営方針案は大学自らが運営当事者として共にその発展に取組んでいただけると考える方を学内外を問わず人選していただくことが重要。運営方針会議委員に対する文部科学大臣の承認については大学の自主性・自立性にかんがみ、国立大学法人からの申し出に明白な形式的違反性や違法性がある場合、明らかに不適切と客観的に認められる場合を除き、拒否することはできないと整理している」と答えた。
そのうえで「運営方針会議の設置で大学の自治が脅かされるという指摘はあたらないし、我々が誘導するというようなことは全く考えられるものではない」と反論した。柚木氏は「今の答弁では益々懸念が深まった」と行政が強く関与する可能性をぬぐえないと警鐘を鳴らした。学問の自由、大学の自主性にかかる問題にもかかわらず、17日の委員会で採決に持ち込まれるもようで、拙速すぎる審議に懸念が広がっている。(編集担当:森高龍二)