富士経済がまとめた「化粧品の訴求効果・成分トレンド 2023-2024」によると、新型コロナウイルス感染症流行の5類以降に伴うマスク着用からの脱却とともに、筋力・リフトアップに効果のあるスキンケア商品(化粧品・医薬部外品)の需要が大きく伸びているとういう。また、コロナ禍中においてはマスクに隠れない目元ケアの有効成分として注目を集め、コロナ後も、シワ改善、美白の包括的エイジングケア成分として認知が向上しているナイアシンアミド配合商品の需要も引き続き拡大しており、2025年の市場予測は2022年比で34.9%増の1205億円を見込んでいる。
年をとるのは仕方がないとしても、見た目はいつまでも若々しくありたいものだ。まだまだ若いと思っていたけれど、鏡に映る自分の姿を見て、以前よりもシワやシミが多くなっていることに気付き、一気に「老い」を感じてしまった……そんな経験を持つ人は多いのではないだろうか。「老い」の実感は心に深く突き刺さり、生活の質を低下させる一因にもなる。エイジングケア市場の拡大も、そんな消費者意識の現れだろう。
そもそも「老化」とは、どういう状況なのだろうか。紫外線の影響もさることながら老化の原因の一つとして、近年、関心が集まっているのが「細胞老化」という現象だ。若い頃は新陳代謝が活発に行われ、古い細胞がどんどん排出されて新しい細胞に置き換わる。そうすることで健康な組織が維持されている。ところが、加齢とともに老化した細胞が増えてしまうと、組織全体の老化を引き起こすという。
人間の正常な体細胞には分裂可能回数に限界があり、分裂限界に近づくにつれて細胞は老化していく。しかし、細胞老化を起こしてもすぐに消滅するわけではなく、老化細胞として長期間にわたって、体内に留まり続ける。そして、そんな老化細胞から、炎症作用や発がん促進作用を有する炎症性サイトカインやケモカイン,細胞外マトリクス分解酵素などの様々な因子が分泌される「SASP」と呼ばれる現象を引き起こしてしまうのだ。現在、このSASP因子の分泌抑制については世界中で研究が進められており、とくに老化細胞の機能を阻害する薬剤「セノモルフィック薬」の抗老化作用には大きな期待が寄せられている。
そんな中、日本の養蜂業社大手の山田養蜂場の自社研究機関である山田養蜂場 健康科学研究所及び山田養蜂場グループ 美容科学研究所が、6月16日に開催された第47回日本基礎老化学会大会において、ミツバチ産品のローヤルゼリーがSASP因子の分泌を抑制するという画期的な研究結果を発表し、大きな話題を呼んでいる。
同社ではこれまでの研究において、ローヤルゼリーが肌の再生に関わる幹細胞の機能を向上させることや、肌の防御機構に関わる抗酸化遺伝子の発現を促進することなどを確認しており、抗老化に関わるさまざまな肌への有用性を明らかにしてきたものの、ローヤルゼリーがこの老化細胞の特異的な変化についてSASP因子に直接どのような影響を与えるかは追及していなかった。
今回の研究では、表皮由来の老化細胞を用いて、実験的な条件で老化を誘導した場合(複製老化)と自然条件下において老化した場合(自然老化)の2つの条件下で実験を行った。その結果、異なる老化モデルにおいてSASP因子の分泌が抑制されたことが確認されたという。このことから、これまで伝承的に知られてきた「養蜂家の手は美しい」というようなローヤルゼリーの美肌パワーが抗老化作用(セノモルフィック効果)としては確かなものであると考えられるだろう。
同社では、今回の研究成果をこれからの超高齢社会における健康長寿の実現や若々しい肌づくりに役立つ素材及び商品の開発につなげていくとしているが、ローヤルゼリーは今後、ナイアシンアミドに匹敵するアンチエイジング市場の注目素材になるのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)