財務省が発表した「平成24年の税関における知的財産侵害物品の差止状況」によると、輸入差止件数は前年比14.3%増の2万6607件と過去最高を記録し、輸入差止点数も111万7592点と前年比53.5%増となっている。
財務省が「平成24年の税関における知的財産侵害物品の差止状況」を発表した。輸入差止件数は前年比14.3%増の2万6607件と過去最高を記録。輸入差止点数も111万7592点と前年比53.5%増となっている。これは、1日で平均70件、3000点以上の輸入を差し止めている計算になる。
輸入差止件数の内訳は、偽ブランド品などの商標権侵害物品が2万6304件でトップ。構成比は前年比15.2%増の98.5%と圧倒的である。構成比1.2%で2位となったキャラクターグッズ等の著作権侵害物品は322件で、同33.5%減となっている。また輸入差止点数についても、商標権侵害物品がそのほとんど占めており、構成比90.6%の101万2538点。著作権侵害物品は同7.3%の8万1191点となった。この数字は品目別件数データにも表れており、ハンドバッグや財布などのバッグ類が構成比45.1%の1万3843件、衣類が同15.9%4890件、靴類が同9.9%の3027件となっている。一方、品目別点数では、医薬品が39万93点で構成比34.9%トップとなっており、次いで衣類、バッグ類と続いている。医薬品は対前年比7.3倍と急増している。
これら輸入差止物品はどの国から来ているのか。大方の予想に違わず、中国からのものが多い。その構成比は実に94.0%にも上り、件数は25007件で前年比17.8%増となっている。以下、香港が構成比2.7%の720件、フィリピンが同1.2%と続いている。平成14年は中国来の物品は7.9%と少なく、この10年で爆発的に増加。一方、10年前に76.4%を占めていた韓国は1.0%にまで減少している。
昨年4月に経済産業省が発表した「中国における知的財産権侵害実態調査」によると、調査対象となった日本企業の6割超が中国において知的財産権侵害を受けたと回答しており、年を追うごとに深刻さは増している。なかでも「不正に商標が侵害された」とする件数は増加しており、2008年度は133件であったのが、2010年度には275件に増加している。中国政府も「知的財産侵害特別摘発活動」を実施してはいるが一向に効果はなく、抑止力にもなっていない。日中知的財産権ワーキンググループも2009年から開催されてはいるが、焼け石に水である。なんら有効な対策が取られていないと言われても仕方のない状態である。中国が「コピー大国」と呼ばれていることは比較的多くの人が了知しているであろうが、こうして数字に表すと改めてその実態を思い知らされるであろう。近時はインターネット通販による被害も増加しおり、購入者自身がコピー商品を購入したと認識していない場合が多い。そうした場合、代金は支払ったものの商品は差し止めされてしまうため、手元には何も残らない。また、金額が不自然に安いなど、コピー商品を疑わせる情報があれば判断も付きやすいが、中古品として販売されているなど、消費者を欺く手段も多岐にわたっている。もはや、この問題を抜本的に解決する策はないのであろうか。(編集担当:井畑学)