質の高い政治 選挙制度改革から始めよ

2013年01月19日 20:32

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日本経済団体連合会が国益・国民本位を前置きし「質の高い政治」を政界に求めた。「質的向上は急務」と危機感を募らせる

  日本経済団体連合会が国益・国民本位を前置きし「質の高い政治」を政界に求めた。「質的向上は急務」と危機感を募らせる。

  最大の問題は衆議院の小選挙区比例代表並立制から生じているとみられる。小選挙区での入れ替えの激しさが政治力を脆弱化させている。

  さきの選挙では藤村修官房長官ら現憲法下で最多となる閣僚8人が落選し、国会を離れた。田中眞紀子文部科学大臣は大学設置認可のあり方に着手したばかりだった。あわせて「教育の右傾化を懸念する」と言い残してポストを去った。国会論戦にも参加できなくなった。

  閣僚経験者は政治の専門分野でも特に世界的なネットワークや有為な人材を知っている。表舞台だけでなく、公私で、これまで構築してきた人的、物的、知的財産を活かせる人材といえる。外交・内政での貢献度は閣僚を離れて後も期待できるところが大きい。小選挙区での選挙では時のムードで振り子が大きく振れ、こうした政治家までもが国会から弾き飛ばされるようになった。国会からこうした閣僚経験者がいなくなったことは国益からみても損失は大きい。

  日本経済団体連合会も「現行制度においては政権交代が可能になったことや選挙に要する政治資金が減少したメリットはある」とする一方で「天下国家を語ることができる優れた政治家が、着実に連続当選を重ねることが困難になり、経験不足の新人議員が散見されるようになった」と指摘する。

  新人議員は散見どころか、かなり目立つ。国政に新たな人材を入れる機会にはなるが、質的にどうなのか一概にいえない。小選挙区では時に世襲議員は新人でも圧倒的優位な選挙戦を戦った。総選挙で開票作業直後に当確が報じられる異常な事態がそれを物語った。

 「世襲議員だから政治家としての質が悪いとはいえない」という意見は最もだが、政治家の家族がそのポストを継ぐことの慣習化はやがて政治をいびつなものにする危険は避けられない。

  日本経済団体連合会は「選挙制度改革論議で定数削減だけでなく、有為な政治家の育成に資する選挙制度を実現するために抜本的な制度改革を」と求めた。

  なかでも「衆議院においては、かつての中選挙区制におけるメリットを改めて評価し、あるべき選挙制度を検討していくことが求められる」と中選挙区制の評価を踏まえた対応を提言した。

  また、選挙運動でのインターネットの活用を解禁すべきで「インターネットの活用は金のかからない政治の実現にも有効」と早期導入を求めた。政治家自らが有権者に自身の考えや経験を伝える手段としてこれほど便利なものはないかもしれない。夏までに法的環境整備をすべきだろう。

  そのうえで「選挙制度審議会を立ち上げるなどの国民的議論を早期に開始すべき」と提言した。

  小選挙区の弊害はこれまでの選挙で浮き彫りになっており、国民の多くは是正を望んでいる。現行制度の弊害解消は一票の格差是正と同レベルに改善されなければならない問題だ。小選挙区は「死票を増やし」不公平な議席数を生み出す元凶になった。経団連が言うように「今年は経済・政治同時改革の年にする」ことが党派を超え、全ての政治家の責任として求められている。(編集担当:森高龍二)