急成長をするAIサーバー市場。AI半導体だけではない電源部品の革新

2025年03月30日 09:24

AI

Murata Power Solutionsが、AIサーバー向け電源にローム株式会社のGaN(窒化ガリウム) HEMTを採用することを発表した

 世界のAIサーバー市場が急速に成長している。2025年2月13日に米調査会社IDCと中国IT大手の浪潮社が発表した「2025年中国人工知能(AI)計算能力発展評価報告」によると、2024年における世界のAIサーバーの市場規模は1251億ドルで、28年までに2227億ドルに達すると予測。AI技術の発展と普及が加速度を増していることに伴って、AIサーバー市場も今後、成長を続けることが見込まれている。

 Webサーバー、メールサーバー、ファイルサーバー、データベースサーバーなど、サーバーは多目的で、多種多様なサービスを提供するものだが、AIサーバーは特にAI(人工知能)アプリケーションやML(機械学習)タスクを処理するために最適化されたサーバーのことを指す。従来のサーバーに比べて、より高度な計算能力と大量のメモリが求められ、並列処理が可能なGPU(グラフィック処理ユニット)の搭載も必須だ。さらには、通常のインターネット検索の数倍とも言われる電力消費量に対応するため、AIサーバー向け電源にも早急な効率改善が求められているほか、小型化によるスペース確保の要望も強い。

 そんな中、日系企業も需要獲得に向けて積極的な動きを見せている。

 例えば、2025年2月13日には、電源のグローバルリーダーとして知られる村田製作所グループのMurata Power Solutionsが、AIサーバー向け電源にローム株式会社のGaN(窒化ガリウム) HEMTを採用することを発表した。

 今回、Murata Power Solutionsの5.5kW出力AIサーバー向け電源ユニットに搭載されるのは、ロームの650V耐圧、TOLLパッケージのEcoGaN™製品だ。業界トップクラスのスイッチング性能を持ち、高放熱なTOLLパッケージを採用しているため、Murata Power Solutionsの電源ユニットにおいて、高密度化と高効率化の実現に貢献している。

 ちなみにEcoGaN™とは、GaNの性能を最大限活かすことで、アプリケーションの低消費電力化と周辺部品の小型化、設計工数と部品点数の削減を同時に目指した省エネ・小型化に貢献するローム独自のGaNデバイスだ。高速スイッチング動作と低い寄生容量およびゼロ逆回復の特性により、スイッチング損失への影響を最小限に抑えることができ、スイッチングコンバータの動作周波数を増加させて磁気部品のサイズを縮小することが可能になり、電源の高効率動作と小型化が図れる。これまでACアダプタや家電など民生機器への搭載が進んでいた印象だが、ついにAIサーバー向け電源のような高出力アプリケーション用途にも乗り出したようだ。

 世界市場だけでなく、日本国内のAI市場も急成長しており、生成AIの普及を背景にロボティクス、自動車、コンテンツ産業などでの需要が高まると予測されている。今回のロームとMurata Power Solutionsのように、新技術を用いた部品の革新もこれから増えてくるかもしれない。日系企業の強力なタッグで、AIサーバー市場のシェア獲得を期待したい。(編集担当:藤原伊織)