企業や団体の出前授業を有効活用する条件とは

2011年09月26日 11:00

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今回積水ハウスが行った出前授業「キャプテンアースのいえコロジー」。熱の入った講義を展開するキャプテンアース(講師)が印象的だった。

 企業や団体が学校などに対して行う「出前授業」をご存じだろうか?

 グローバル化や環境に対する意識などを背景に、CSR(企業の社会的責任)は今やコンプライアンスと共に企業に求められる大きな要素として一般的に認識されている。そのCSRのひとつとして「出前授業」をプログラム化し、積極的に学校などに講師を派遣する企業も多い。

 出前授業を行っている企業は、それを生徒たちの将来の職業選択の参考として役立ててもらうため、学校の授業の場を活用して、事例紹介や実験などを織り交ぜながら自らの事業活動をわかりやすく伝えている。

 しかし、出前授業を活用したい学校側はその存在を知っていても”どこに聞けば良いのか”"どのような内容なのか”"費用はかかるのか”など入口を見つけられずに、なかなか実現できていないというのが現状だ。

 そんな中、経済広報センターが出前授業を行っている企業をまとめた「出前授業データブック」を今年初めて刊行するとともに、全国の教育委員会や学校関係者に無料配布を行い、その存在を広めていった。その結果、出前授業の存在を初めて知った教育関係者の増加や、一度に多くの企業を招き、講義スタイルを実施する学校が増えてきたという。

 その実施例として、中学3年生を対象に20社以上の企業の中から生徒が希望した授業を3日間に渡って受けられるという「職業人による出前講座」を行っているのが、神奈川県の小田原市立泉中学校だ。各企業にコンタクトを取り、プロジェクトを実現させた中心的存在でもある村越一馬教諭は「出前授業データブックの存在を知り、こんなにたくさんの企業が実施していることに驚いた。同時にこれを活用する手はないと思い、今回の企画を立てた。『総合学習』という、教科を特定せずに横断的に学習する科目を上手く利用することで、子ども達が将来的な進路に向けて、今自分たちが学習していることが、将来の仕事にどう結び付くのかということを学べる良い機会だと考えている。中学3年生は将来の職業を現実的に考える者、空想的に考える者と個人差はあるが、大方の生徒はまだまだその意識が薄く、目の前の進学について考えている。そこで、今回は生徒たちにとって日ごろ馴染みのある企業や団体を敢えて招くことで、まずは企業の活動に興味を持ってもらい、そして出前授業を通じて様々な知識を得ることで、将来に向けて視野が広くなればと思っている」と語った。

 この「職業人による出前講座」に参加した企業はリコーやヤクルト、日本航空、積水ハウスなど、その分野の大手企業が名を連ね、他にも全国銀行協会などの団体も参加している。今回、授業風景を取材した積水ハウスは5名のスタッフを用意し、断熱性能の実験をグループで行うなど、体験学習的な要素を取り入れており、熱の入った授業を実施していた。同社は他にも環境教育プログラムの出前授業なども積極的に実施している。

 企業の出前授業はCSR活動の一環として最近よく耳にするようになったが、せっかくの良い取り組みも企業側の一方通行的なインフォメーションでは、多くの人が機会損失になってしまう。このプログラムを欲している数多い教育関係者のためにも『出前授業データブック』と同様な取りまとめをした資料や機関の存在は”橋渡し”役としてはもっと必要になる。文部科学省もエコ学習の出前授業だけではなく、地域に貢献している企業や他の分野での出前授業に対して後方支援を積極的に行ってもらいたい。