震災の影響を最小限に抑え増益につなげた飲料メーカーの企業努力

2011年09月15日 11:00

 東日本大震災から半年が経過し、震災後の各業界大手企業の業績状況が出揃ってきた。その中でも飲料業界は、生産設備の被災や資材調達の影響で市場に供給する商品を制限しただけで無く、大震災による電力不足の影響で、自販機が注目を浴びたこともあり、大きな打撃を受けたものと予測されていた。しかし各企業が発表した四半期決算を見る限りでは、多少の影響は否めないものの、現段階で予測範囲内の数字で着地している。

 伊藤園は平成24年4月期第1四半期連結業績が、売上高1027億8800万円(前年同期比5.9%増)、営業利益67億3500万円(同13.2%増)、経常利益63億3400万円(同15.1%増)、四半期純利益33億8000万円(同27.6%増)となっている。昨年の猛暑並みとはいかなかったが、比較的高めに推移したこともあり、主力商品である日本茶飲料は順調に売上を伸長。紅茶飲料やコーヒー飲料においても、新商品を導入したことにより好調に推移したようだ。また、グループ会社であるタリーズコーヒージャパンなどの業績が引き続き好調に推移したことも大きいと考えられる。

 コカコーラーウエストの平成23年12月期第2四半期連結業績は、売上高1899億3300万円(前年同期比12.3%増)、営業利益60億1400万円(同369.8%増)、経常利益60億1600万円(同318.3%増)、四半期純利益23億6300万円(同191.5%増)となっている。大震災の発生による生産の減少や消費低迷などの影響はあるものの、大幅な増収増益となった背景としては”営業の変革”への取り組みを徹底して実行したことにより、販売数量および売上高が増加。さらに、平成22年10月1日付で株式を取得したキューサイとその子会社5社を同日以降連結対象としたことが影響しているようだ。

 また、ダイドードリンコも平成24年1月期第2四半期業績を発表し、グループ全体での売上高は734億5100万円(前年同期1.1%減)、営業利益は38億800万円(前年同期47.4%増)、経常利益は35億1000万円(前年同期60.7%増)の決算となり、四半期純利益は7億4400万円(前年同期23.1%増)となっている。この数字は、同社が今年度のはじめから、営業・生産・商品開発を中心とした組織改革を継続的に実施し、全てのビジネスプロセスを見直し、堅固な収益体質の構築を進めてきた結果と見てとれる。また、業務の全面的な見直しによる固定費削減など徹底したコストコントロールも行い、利益確保に注力することで、震災による影響を最小限に抑制することができたようだ。また、グループ会社である大同薬品工業が、「美容と健康」を謳った女性向け商品を開発する体制を構築、大手化粧品会社など多方面にわたる受注を獲得している点も大きい。

 今後、まだ見えていない部分で大震災の影響が出てくるものと考えられるため、各企業、安心はできない経営状況は続くと考えられるが、グループ企業及び部門との連携により、この深刻な状況を打破していく術を熟慮していくものと考えられる。