衆院選の投開票を明日に控えた今、有権者の最大の関心事は、統計上の数字よりも「財布の中身」の実感にある。厚生労働省が公表している直近の「毎月勤労統計調査(令和7年11月分結果確報)」を改めて精査すると、日本の労働環境が抱える深刻な矛盾が浮かび上がる。名目賃金(現金給与総額)は前年同月比3.1%増と堅調な伸びを維持しているものの、依然として高止まりする物価上昇がその恩恵を打ち消し、家計の購買力を示す「実質賃金」は前年同月比2.8%減。これにより、実質賃金のマイナス傾向は11ヶ月連続で確定した。
この結果は、現在の日本社会が抱える「賃上げが物価に追いつかない」という構造的な課題を象徴している。昨年来、一部の大手企業や先端産業では賃上げの動きが見られたものの、世間の大半を占める中小企業の従業員や年金受給者にとって、その波及効果は限定的だ。総務省の家計調査によれば、食料や光熱費といった生活必需品への支出割合(エンゲル係数等)が上昇しており、所得の伸びが「生活の維持」に相殺されている実態がある。
こうした生活実感を裏付けるように、日本銀行の「生活意識に関するアンケート調査」では、8割を超える世帯が「物価上昇」を生活のマイナス要因として挙げている。さらに、衆院選に向けた各社の世論調査においても、有権者が最も重視する政策として「物価高対策・経済」が約半数を占め、長期的な成長戦略を大きく上回る結果が出ている。
これらのデータから読み取れるのは、有権者の関心がマクロ経済の「成長神話」以上に、足元の可処分所得を守る「確かな安心」に集中しているという現状だ。自民・維新の連立政権による「投資と供給力強化」という主張に対し、新党「中道改革連合」は「今ここにある生活危機」を強調し、即効性のある直接支援を求めて攻勢を強めている。明日の審判は、この生活実感の溝を誰が、どう埋めるのかを問うものとなるだろう。
本格的な春闘を控えた今、新政権には企業収益をいかに早く家計へと循環させられるか、その速度と実効性が厳しく問われている。同時に、我々有権者にとっても、明日の投開票は単なる支持政党の選択ではない。自らの生活実感という尺度を、政治のリアリティへと照らし合わせるための、極めて重い意志決定の場となるはずだ。(編集担当:エコノミックニュース編集部)













