近年各国で発生した地震災害により、建築物の安全に対する意識が更に高まっており、使用されているコンクリートにおいても、安全性の面から確実な品質管理、保守、メンテナンスが求められている。一方で膨大な量のコンクリートの管理は負荷が大きく、省力化などを目的としたICタグの活用が検討。具体的には、コンクリートの種別や品質などにかかわる情報が関連付けされたICタグを、コンクリート内部に埋め込んで管理するという手法で、バーコードなどと比較して破損が少なく、読み取り作業が手軽というメリットがあるという。
一方、これまでコンクリート内蔵の実験に採用されてきた13.56MHz帯のICタグでは、コンクリートの材質や厚みの影響を受けて通信距離が約5cm程度以下となるため、厚みのあるコンクリートでは使用できず、かぶり厚さ(鉄筋とコンクリート表面間との厚み)が深い大型の建造物へ内蔵することができないなど、利用範囲や運用方法が限定されていた。さらに生コンクリートにICタグを添加して流し込んだ場合には、ICタグがコンクリートの不特定位置に固定されることから、ICタグを探し出すために一度に多数のICタグを同時添加しなければならないなどの課題があった。
そのような中、凸版印刷と住友大阪セメントは、コンクリート構造物内の鉄筋に取り付けて、コンクリートの種別や品種などに関する情報を持つことで、保守メンテナンスに活用可能なUHF帯ICタグを共同開発したという。
今回、開発されたUHF帯ICタグの特徴としては、建設現場での利用を考慮し、コンクリートの材質や鉄筋などの影響を受けにくい構造や材質を採用。かぶり厚さと同程度、あるいはそれよりも深く設置するため、鉄筋コンクリートの耐久性(中性化、乾燥収縮など)に悪影響を及ぼすことはなく、またコンクリート製品の製造時にも不具合が生じないことをテストピース(供試体)により確認しているという。また、UHF帯ICタグ向けの中出力ハンディリーダを使用。かぶり厚さ15cmの、コンクリートの鉄筋に同ICタグを設置した場合、コンクリート表面から通信距離が約20cm以上でも読み取りが可能で、最大埋め込み深さは25cm程度(実測値)までとなっており、厚いコンクリートや大型の構造物で活用できる。さらに、電波の指向性が緩いため、読み取り作業時には、コンクリート内に内蔵されたICタグをピンポイントで探して読み取る必要がなく、離れた位置から簡単に読み取ることが可能になるなど、これまでの難点を克服した内容となっている。
両社は今後、量産試作品による各種検証、ユーザーによる評価、さらにucodeタグ認定作業を進め、2011年10月より住友大阪セメントがサンプル提供を開始。2012年1月には両社で販売を開始する予定となっており、コンクリート製品会社、ゼネコンなどのコンクリートユーザへの拡販をめざす。