トヨタ車の「CAR NAVIGATION」からデンソーが離脱、NAVI開発会社を収斂(しゅうれん)する

2015年08月14日 09:12

Toyota NAVI

トヨタ系販売店装着オプションの自動車用品として販売している「CAR NAVIGATION」システムの上級モデル。デンソーはそのNAVI供給から離脱して、車載カメラやレーダーによる自動運転支援システムと連動する次世代車載情報通信システム開発に軸足を移す

 昨年11月、トヨタ自動車はグループ内の部品会社の再編に乗り出した。ブレーキ、ディーゼルエンジン、マニュアルトランスミッション(MT)の国内3事業の重複を解消。省エネや安全技術、自動運転技術などの競争が過熱するなか、「強い部品」が競争力を高めるために不可欠だという判断だ。トヨタは特定のグループ企業に部品開発事業を集約して開発と生産の効率を高め、競争に備える。

 グループ企業の再編とは3つの中軸事業であるディーゼルエンジン、MT、ブレーキなどの開発生産で事業が重複しているグループ子会社の業務を整理一本化するというのが主旨だ。競争力を高めるために「コストの低減と技術的な優位性」を追求する“集中”を実施するということだ。

 そして今月、同社は「CAR NAVIGATION(カーナビシステム)」の調達先をも集約すると発表した。デンソーからの調達を中止しアイシン精機やパイオニアなどからの購入に絞り込む。現在、CAR NAVI市場は伸び悩み気味で、スマートフォン・アプリなどとの競争も激化している。グループ内の技術開発・機能重複を減らし、経営資源を安全や自動運転関連など重点分野にデンソーの技術力を振り向ける。

 トヨタは現在、工場や販売店で装着するCAR NAVIをデンソー、アイシンAW、パナソニック、パイオニア、富士通テンから調達している。デンソーは、経路案内機能をメインとする現行型CAR NAVIについて、トヨタの国内向け車種に搭載する機種開発を中止。5年以内にトヨタへのNAVI供給を中止する方という。

 1987年に純正CAR NAVIの搭載を始めたトヨタは、デンソーを主要調達先と位置付けてきた。だが、国内新車販売におけるNAVI装着率が6~7割に達し、今後は大きな伸びは見込めない。海外では安価なサードパーティ製やスマホで代替するユーザーも多い。電子情報技術産業協会(JEITA)によると、国産NAVI国内出荷台数は2年連続で減少しているという。

 デンソーは今後、車載カメラやレーダーによる自動運転支援システムと連動する次世代車載情報通信システム開発に軸足を移す予定だ。

 年間生産・販売台数がグローバルで1000万台を突破したトヨタはさらなる成長に向けて「TNGA」と呼ぶ新たなクルマづくりを進めている。グループ内機能の見直しもその一環で、冒頭で述べたディーゼルエンジンやシート部品などでも集約を進めている。

 トヨタ傘下のグループ企業の再編の最大の狙いは、「強い部品づくり」にある。トヨタはクルマの生産において75%のパーツをトヨタ本体以外から調達している。従来、グループ企業からの納入が多かったが、燃料電池車などの開発では、これまで自動車とはあまり関係がなかった企業の技術が必要になってきた。そのため、グループ内企業の集約は競争力アップのために必須とし、すでに熟成メカとなったCAR NAVI開発を収斂させるということだ。(編集担当:吉田恒)